モビルス

チャットボットから生成AI活用まで
コンタクトセンターの高度化を総合的に支援

コンタクトセンター向けソリューションを提供するITベンダーにも増えつつあるカスタマーサクセス部門。チャット／ボイスボットなどを提供するモビルスは2022年にカスタマーサクセスを組織化。有償のサクセスメニューを設け、契約前段階から導入後に至るまで、手厚い支援を行う。また、製品ごとにスペシャリストCSを育成し、プロフェッショナル集団として、顧客の成功実現を組織で目指している。

　モビルスは、コールセンターをはじめとした顧客接点を総合的に支援するITベンダーだ。提供しているのは、SaaS型有人チャット・ボイスボット「モビシリーズ」など。生成AIを活用したオペレーション支援AIサービス「MooA」も提供、新機能開発を進めている。

　従来から、営業部門の機能のひとつとして存在していたカスタマーサクセス業務を、2022年「Customer Success Division（カスタマーサクセス本部）」として独立させた。経緯についてCustomer Success Division長の河田大介氏は「当社の製品群はカスタマイズ性が高く、機能も多様で、お客様ごとの状態や要望に合わせる設定が必要です。より細やかに支援し、“真のカスタマーサクセスの実現”を目指して設立しました」と話す。

Customer Success Division長 河田大介氏

Customer Success Unit長 駒澤吉晃氏

４つの有償化プランを構築
サクセス業務の整理にも成功

　同部門の組織の構造と役割を示したのが図１だ。オンボーディングからエクスパンションまでのいわゆるカスタマーサクセス業務に加え、案件の事例化や生成AI活用の検討を含めたコンサルティング案件まで、幅広く対応する。

図1　体制概要

　部門全体では、図２のフェーズごとに４つの有償支援プランを提供している。最大のポイントは、①の伴走型導入前アセスメントで“契約前（導入前）”からカスタマーサクセス部門が関与している点だ。営業に同行し、「製品活用を通してどのような問題解決が可能か」を提案している。Customer Success Unit長の駒澤吉晃氏は「営業段階からカスタマーサクセスが参画することで、サクセス（ゴール）を当社と顧客側の両社で明確にでき、導入後のオンボーディングもスムーズにできます」とメリットを説明する。

　４つの有償プランを整理・構築したことでフェーズごとの業務が整理でき、カスタマーサクセス業務の型化にも成功した。

図2　４つの有償支援プランの流れと概要

製品別のスペシャリストが
“サクセス”実現を徹底支援

　同社が考える“顧客のサクセス”について、河田氏は「製品活用により望む成果（効率の向上、コスト削減、売上増加、顧客満足度向上、ROIの最大化など）を達成し、ビジネス目標を実現することです。そのためには、課題やニーズを理解し、適切な解決方法を提示し“使いこなしていただくこと”が不可欠。お客様の成功によって我々も成功するwin-winの関係構築を目指しています」と語る。

　これを実現するため、製品ごとに“スペシャリストCS”を置いている。たとえば、チャットボットではシナリオ設計がキモとなる。とくにはじめて導入する企業においては、コールリーズンを整理し、全体を網羅するシナリオ型とロングテールをカバーするAIチャットボット型をハイブリッドするなど顧客の特性に合わせたシナリオ設計が必要だ。あるいは、複数の問い合わせチャネルを一覧化し、最適なチャネルへ誘導するビジュアルIVRでは、Webマーケティングやサイト構築知識も必要となる。カスタマーサクセスの実現には、一定の専門的な知識が必要であるため、各スペシャリストを養成している。「ジェネラリストを目指していた時期もありましたが、お客様の成功に向け、スペシャリスト集団として組織的な支援に重点を置く結論になりました」（河田氏）

　今後は、定着化支援サービスなどカスタマーサクセスメニューの拡充・拡販や、営業・カスタマーサクセス・カスタマーサポートの一気通貫型の総合支援による総合的な顧客課題の解決を目指す。具体的には、サポートサイトの動画やデモ、MooAを用いたサジェスト機能などのテックタッチを強化。さらに、利用データなどから製品利用の最適解を探求し、コンサルティングにも力を入れていく方針だ。

（月刊「コールセンタージャパン」2024年9月号 掲載）