本誌記事 ケーススタディ アドバンスト・メディア

アドバンスト・メディア

多機能な音声認識システムの使いこなしを支援
オンボーディングにコミュニティを活用

今後導入予定のITソリューションとして必ず上位に挙がる音声認識システム。初めて導入するという企業は多く、多機能で使いこなしに戸惑うケースも少なくない。アドバンスト・メディアのカスタマーサクセスチームは企業の導入目的に応じたオンボーディングの実践と、コミュニティを通じたナレッジの提供でユーザー企業の使いこなしを支援。解約抑止、継続率の向上に取り組んでいる。

居福良紀氏
CTI事業部 カスタマーサクセスグループ サブセクションマネージャー 居福良紀氏

 コンタクトセンター向け音声認識ソリューション「AmiVoice Communication Suite4」を開発・販売するアドバンスト・メディアは、2023年4月にカスタマーサクセスチームを発足。ユーザー企業の習熟度向上と継続率向上を目的に、製品活用支援やコミュニティ運営を行っている。AmiVoiceは買い切りモデルとSaaSモデルがあり、SaaSモデルだけではなく保守費用を継続的に支払っている買い切りモデルのユーザー企業もサクセスの対象である。

 「以前からお客様が製品を十分に活用できていないという課題がありました。しかし、支援体制がなく、お客様からの問い合わせのみをサポートする程度で、活用のための情報提供が少なかった。これを解決するため、2021年6月にコミュニティを開設し、基本的な機能の使い方や活用事例をいつでも参照できる仕組みを構築しました。しかし、それだけではお客様の習熟スピードは上がらない。専門チームを組織して、お客様を支援する必要性を強く感じ、サクセス部門を創設しました」と、CTI事業部 カスタマーサクセスグループ サブセクションマネージャーの居福良紀氏は振り返る。

導入目的に応じてプログラム設計
カスタム・オンボーディング実践

 にCTI事業部の体制を示す。営業グループ、技術推進グループと並んでカスタマーサクセスグループがあり、その中のチームの1つがカスタマーサクセスチームだ。ミッションは解約抑止と継続率の向上。KPIとしてMRR(月次経常収益)を見ている。

図 アドバンスト・メディア CTI事業部体制図
図 アドバンスト・メディア CTI事業部体制図

 継続率向上のためには、ユーザー企業がAmiVoiceの活用を深めなければならない。このため、オンボーディングに注力している。

 「オンボーディングを目的としたミーティングは導入後3カ月で全6回実施します。まず、初回はお客様の導入目的をヒアリングし、それを実現するには、どの機能をどういうふうに使えるようになればいいかを検討し、全6回のプログラムを設計します。これを提案し、合意を得たうえで実施しています」と居福氏。すべて顧客の目的に応じてカスタマイズして提供している。

 毎月の利用状況を踏まえた支援も行う。AmiVoiceのSaaSモデルは、顧客のサービス利用状況や通話録音のテキスト化状況を確認することができる。例えば、テキスト化がされていない場合は利用していないことを示す。そこで、過去の解約した企業の傾向と照らし合わせ、離反しそうな企業を抽出してアプローチを行う。どんな課題を抱えているかを聞き出し、活用方法を提案している。

 メンバーシップコミュニティ「Comm.com(コムコム)」は、重要な情報発信の場だ。買い切りモデルも含む、AmiVoiceの全ユーザー企業と販売パートナーが参加できる。基本的な機能の使い方を動画で紹介している。オンボーディングで学んだことをおさらいできるので、習熟スピードを高められる。「コミュニティのコンテンツを用いたセルフオンボーディングもできますが、お客様との密なコミュニケーションのほうが重要と考えています」と居福氏は強調する。

 活用事例も大事なコンテンツだ。いくら機能の使い方を知っていても、実際にどう使えばいいか発想するのは難しい。他社の活用事例から学ぶことで自社の活用も促進できる。「お客様と会話しているときにコンテンツのアイデアが浮かびます。この活用方法を他のお客様にも教えたい、こんな使い方があるのかと思わぬ発想をいただくこともあります」(居福氏)。

 コミュニティはユーザー同士の交流によるロイヤルティ醸成が魅力だが、Comm.comの場合はまだこれからだ。コアユーザーの協力を得ながら活性化を図る考えだ。

メンバーシップコミュニティ「Comm.com」
メンバーシップコミュニティ「Comm.com」

パートナーとの意識合わせで
協力してサクセスを実現

 AmiVoiceはパートナー販売が多いためサクセス活動が難しい面もある。居福氏は「当社とパートナーのサクセスに対する考えが一致しないケースもあります。当社がどこまでやって、パートナーに協力いただく部分はどこか。パートナーごとにカスタマーサクセスに対する考え方を確認し、戦略をすり合わせる必要があります。現在、その仕組みを設計中です」と話す。

 カスタマーサクセスチームの発足から1年、活動は軌道に乗り始めている。「期初に最優先で考えたことは、データドリブンで施策を考えて実践すること、オンボーディングを設計することの2点。それはどちらも、おおむね実現できました。2024年度は、それに沿ってきちんと動けるかを検証していきます」と居福氏は力を込める。

 コミュニティの活性化、パートナーとの連携強化を進め、カスタマーサクセスチームをさらに成長させる方針だ。

(月刊「コールセンタージャパン」2024年5月号 掲載)

2024年04月20日 00時00分 公開

2024年04月20日 00時00分 更新

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