通信インフラを主に扱う同部門では、ソフトウエアの操作方法を教えるような導入支援より、利用が続くなかで生じる課題を見つける活動に重きをおいているようだ。
例えば、「インターネットにつながりにくい」という相談を受け、利用状況を調べると、特定の時間帯に通信量が集中している場合がある。その状況に応じて、帯域の拡張を提案する。一方、継続的にモニタリングしている顧客では、前月などと比べた変化からアプローチの対象を見つけ、直販担当やコンタクトセンターから連絡する。顧客からの相談と、データからの兆候把握の両方を起点としている。
ハイタッチ支援で重視するのが、「QCSR(Quarterly Customer Success Review)」だ。四半期のサービス利用状況を振り返り、そこから考えられる課題を仮説として示す。そのうえで、顧客の経営課題と照らし合わせ、今後どこに働きかけるべきかを議論する。現場の担当者に加え、経営層などにも接点を持ち、サービスの利用拡大を事業上の課題解決に結び付けるといった活動を実践している。「(部門化した)2022年と比較すると、受注ベースで約6倍に達しています」(橘氏)とかなり高い成果も挙げている。
契約更新への働きかけは、期限直前では遅い。「1、2カ月前から準備するのではなく、半年ぐらい前から、次の契約更改に向けてしっかりお客様と対話していく必要があります」(同部門担当課長の川上大典氏)というように、単なる継続手続きではなく、付加価値を提案する機会とするためにも、日頃から利用状況や課題を共有することが土台となる。
さらにインサイドセールスのコンタクトセンターへは、顧客の傾向に応じたアプローチの手順や標準提案書も用意。ハイタッチでの対話と、電話・メールによる働きかけを、データと共通の進め方で支える仕組みだ。
こうした活動を担う人材には、顧客理解とサービス知識の双方が求められる。同部門は独自の「CSマイスター」制度を設けている。「顧客対応に求められるスキルと、幅広い商材の知識を掛け合わせ、どちらも一定以上のレベルが認められるメンバーを認定しています」(橘氏)。営業とCSの間で人材が経験を積む循環にも取り組み、CSを担える人材の育成を図っている。
今後は大企業中心の活動を中堅・中小企業にも広げ、利用データに基づく提案シナリオを充実させる方針だ。一方、保守・サポートの対応履歴とSFAの連携にはまだ課題が残っている。加えて、AIによる応対支援なども検討している。
ユーザーの利用状況の可視化は、提案の出発点にすぎない。変化の背景を顧客との対話で確かめ、経営課題に即した改善策へ具体化する。データの分析と、人による理解・判断をつなぐことが、既存顧客への価値提供と取引拡大を両立するCSの役割といえる。
カスタマーサクセス部門を設けるケースが多いスタートアップのSaaS企業も、自社ソリューションの利用状況データをもとにオンボーディングやアップセルといった活動を重ねているが、NTTドコモビジネスは営業担当者やインサイドセールスを担うコンタクトセンターとの連携、人材育成制度の構築など、よりダイナミックな活動が際立つ。成長を目指すそうした企業にとって良きロールモデルといえそうだ。
2026年11月05日 00時18分 公開
2026年11月05日 00時18分 更新
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