元ファーストクラスCAの接客術“おもてなし力”の磨き方 第2回

2023年7月号 <元ファーストクラスCAの接客術 “おもてなし力”の磨き方>

江上 いずみ

“おもてなし力”の磨き方

<著者プロフィール>
筑波大学・神田外語大学客員教授。Global Manner Springs代表。慶應義塾大学卒業後、日本航空(JAL)の先任客室乗務員として30年間乗務。機内アナウンスに定評があり、JALの機内アナウンス指導クリニック創設者でもある。1987年、皇太子殿下・美智子妃殿下特別便に選出され乗務。現在、大学や医療機関、介護施設、官公庁や企業に講演や研修を行う。著書「JALファーストクラスのチーフCAを務めた『おもてなし達人』が教える“心づかい”の極意」(ディスカバー・トゥエンティワン)「幸せマナーとおもてなしの基本」(海竜社)

第一印象を高める「5原則」──“表情”のコツ

江上 いずみ

 新年度を迎え、皆さんの職場でも新しく迎えた社員・職員に新任研修を施しているのではないでしょうか。私もこの記事を書いている4月は、県庁や市役所などの官公庁、企業や医療機関などの研修で全国を飛び回っています。

 さて、その研修で最初に新社会人に話すのが「第一印象の大切さ」です。そして、その第一印象を高めるための「5原則」があることを伝えます。それが、(1)表情、(2)態度、(3)身だしなみ、(4)挨拶、(5)言葉つかいです。

 このうち、「表情」「態度」「身だしなみ」といった視覚からくる第一印象は、出会いからたった3秒から5秒で決まります。さらにその相手と言葉を交わした際の「挨拶」「言葉づかい」といった聴覚からくる第一印象は、話を始めてからわずか10秒から15秒で決まってしまいます。

 一度、相手に悪い印象を与えてしまうと、それを覆すには2倍から3倍の時間がかかるといわれていますから、いかに第一印象が大切かわかります。

 今回は、その中で最初に出てくる「表情」についてお話したいと思います。人に与える良い「表情」といえばもちろん「笑顔」ですね。

 お客様をお迎えするときのスタッフがどのような表情で「いらっしゃいませ」と迎えるか、そのお迎えの瞬間だけで、その日のお客様の楽しさが決まります。コールセンターで電話を受ける皆さんも、相手に表情は見えなくても、口角をあげて明るい声で皆さんの笑顔を伝えているのではないでしょうか。

 それはお客様に対してだけではなく、ビジネスの場においても、上司が、あるいは部下が「笑顔」でいるだけで、職場の雰囲気は和み、周囲の人たちを幸せな気持ちにします。

 私も客室乗務員として乗務をしているときは、その「笑顔」を生かした接客の仕方、物を提供するときのサービス方法をCAに徹底的に指導してきました。そのときの合言葉が「目→物→目の受け渡し」です。

 たとえばお客さまにコーヒーをお渡しするとき、まずは「〇〇さま、お待たせいたしました」と言いながらお客さまの目を見ます。テーブルにパソコンや書類を広げていらしたら、そのテーブルの上に置くわけにはいきませんから、しっかりと手渡しします。このときはコーヒー、つまり提供する「物」を見ます。そしてお渡しできたことを確認できたら手を離して、「どうぞごゆっくりおくつろぎください」ともう一度お客様の「目」を見る。これが「目→物→目の受け渡し」です。

 皆さんの職場においても、名刺を交換するとき、取引先に書類を渡すときなどに、相手の目を見て挨拶をし、「物」をしっかり手渡して、それからもう一度相手の目を見て「よろしくお願いいたします」という言葉をかける──この一連の「目→物→目」の動きをおおいに活用して和やかな雰囲気を醸し出していただきたいと思います。

イラスト

 

2024年01月31日 18時11分 公開

2023年06月20日 00時00分 更新

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