マネーフォワード
カスタマーサクセス業務は、顧客ごとに異なる課題や進捗に対応する「ワン・トゥ・ワン」スキルが組織全体に求められる。結果、業務の属人化や情報共有の難しさが課題となりやすい。マネーフォワードは、プロジェクト・タスク管理ツール「Backlog」を導入、オンボーディング支援を中心に社内外のやり取りを一元化、カスタマーサクセス体制の再構築に着手した。
会計・人事労務・経費精算などのクラウド型バックオフィスSaaS「マネーフォワード クラウド」や、個人向けの家計簿アプリ「マネーフォワード ME」などを展開するマネーフォワード(図参照)。

同社では2020年秋より、カスタマーサクセス業務の効率化と標準化を目的に、ヌーラボが提供するプロジェクト・タスク管理ツール「Backlog」を活用、顧客との「伴走」支援を強化している。
カスタマーサクセスに従事するメンバーは、各部署で管轄しているプロダクトの導入支援や顧客への活用促進コンテンツ作成・提供を行う。
Backlogの導入以前は、メールを中心に顧客対応を進めていたが、「進捗情報の共有が困難で、顧客へのフォローアップ状況の理解度が個々の担当者に依存していました」と、ERPカスタマーリレーション本部ソリューションコンサルティング部の阿部 恵理華氏は振り返る。「双方の担当者によるメールの見逃しなどで電話確認が発生するケースもあり、確認漏れや二重対応も発生。Backlogの導入は、こうした属人化を排除し、業務プロセスを組織で標準化するための第一歩でした」(阿部氏)
Backlogはプロジェクトごとの課題や進捗をオンライン上で一元管理するタスク管理ツール。Backlog導入後は、支援開始時に顧客をBacklogへ招待し、専用のプロジェクト環境を作成。キックオフミーティングの場でツールの操作方法を説明、最低3カ月間のオンボーディング支援を同環境で実施する。
顧客とのタスクの進捗管理や、問い合わせ管理などすべてのプロセスがBacklog上で完結するため、進行状況が可視化され、顧客のフォローも漏れなく行えるようになった。

マネーフォワードのカスタマーサクセスは、顧客の希望と規模、導入製品に応じて、担当者が個別にサポートする「ハイタッチ型」と、チーム対応で進捗が滞っている顧客を重点的にフォローする「ロータッチ型」の2種類の支援プランを用意している。
いずれもタスクの細分化と進捗確認をBacklog上で行い、稼働状況の可視化と業務標準化を図っている。プロジェクトの進捗を可視化できるガントチャートを使い、「この作業は1日で終わります」「この期日までに対応をお願いします」といった明確な指示を提示。顧客が「完了」ボタンを押すことで進捗が即時共有され、確認作業や会議資料の作成も不要になった。
Backlogの操作に不慣れな顧客も、導入初期にレクチャーを受けることで問題なく運用できるようサポートしている。
また、「Slackと連携しタスク更新に関する通知をリアルタイムで受け取ることができるため、情報共有の迅速化や対応漏れの防止にも役立ちます」と阿部氏は効果を実感している。

Backlogの活用は、単なるタスク管理にとどまらない。マネーフォワードでは、外部パートナーとの連携にもBacklogを活用。これにより社内外の業務全体像が見えるようになった。
阿部氏は、今後の展望として、「AI活用による生産性向上」を挙げる。AIによる一次回答や対応の自動化にも視野に入れる。ロータッチのセルフプラン(初期設定などをユーザー自身で行うプラン)でも十分に活用できるクライアントを増やす戦略で、「そのために、お客様が安心して自己解決できる環境を整えることが重要です」(阿部氏)と強調する。
「カスタマーサクセス部門は、“お客様からの問い合わせがなくなるレベルのサービス品質”を目指しています。そのために、導入支援のさらなる仕組み化は急務です」(阿部氏)と展望を語る。
導入支援の効率化と品質向上、さらには顧客との長期的な関係構築のために、同社のカスタマーサクセス部は今後も“仕組み”のアップデートを継続していく構えだ。カスタマーサクセスの理想形を追求する同社の取り組みは、他のSaaS企業にとっても有効なヒントとなるだろう。
(月刊「コールセンタージャパン」2025年9月号 掲載)
2025年08月20日 00時00分 公開
2025年08月20日 00時00分 更新