カスタマー・エクスペリエンスの基礎~今、必要とされる顧客体験第3回

 

再購買をもたらす顧客体験の実現
センターは不満解消できる最後の砦


「満足した顧客は2人に、不満足な顧客は6人に伝える」という“グッドマンの法則”をベースに、顧客“不”満足がもたらす悪影響を数値化することで、『サービス品質』と『売り上げ』の相関を探る。今回は、「口コミ」「再購買」という切り口から、調査データをもとに顧客の行動を検証。電話応対によっていかに機会損失を防ぐかをみる。

著者:ラーニングイット 河合晴代
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 顧客体験が、いかに企業の財務へ影響を及ぼすのか――その数値化を試みる。  第2回では、顧客体験から生まれる3つの主な行動のうち「お客様のフィードバック」について解説した。今回は残りの2つである、「口コミ」「再購買」について、「グッドマンの法則」で有名なジョン・グッドマン氏の著書「Strategic Customer Service」を元に論じてみたい。

ネガティブな口コミは脅威!
不満足は満足の3倍“伝えたい”

 「CS向上が売上に貢献する」ことを証明することは非常に難しいが、「顧客不”満足が売上機会損失につながる」というアプローチでコールセンターの役割や意義を示すことは可能だ。

 実際に、「口コミ」は、良い口コミよりも悪い口コミの方が多くの人に伝わる。グッドマン氏の調査によれば、満足した顧客は2人に、不満足な顧客は6人に伝えるという。仮に顧客が1万人いた場合、7割の顧客が満足したとしても、その好意的な口コミは1.4万人にしか伝わらない。残り3割の不満足な顧客が非好意的な口コミを伝えるのは1.8万人となり、4000人も多くなる(図1)。この口コミ効果によって、10人に1人が購買を控えたと仮定すると、毎年400人のペースで顧客が減っていくことになる。顧客単価が1000ドルだった場合は40万ドルの減収だ。ここで注目すべきは、7割の顧客に満足してもらっても、非好意的な口コミの方が多く広まり、結局は顧客数の減少につながってしまう、ということである。

図1 「顧客1万人/満足度7割」のケースの口コミ


 不満足な顧客の行動を分析することで、さらに興味深いことが分かる。不満を抱えた顧客は、「不満を申し出る顧客」と「不満を申し出ない顧客」に分かれる。グッドマン氏の調査によると、「不満を申し出る顧客」のうち、「対応に満足した顧客」が好意的な口コミを2人に伝え、「仕方なく納得した顧客」は4人に、「不満が解消されなかった顧客」は6人に非好意的な口コミを伝えるという。そして、そもそも「不満を申し出ない顧客」は、非好意的な口コミを2人に伝える、と同氏は指摘している(図2)。つまり、「不満を申し出た顧客」を満足させない限り、非好意的な口コミは大きく広まり、さらなる顧客減少につながってしまうのだ。

図2 不満足な顧客の行動<口コミ>


機会損失は1000万ドル――
電話応対が再購買を左右する

 最後に、顧客ロイヤルティの高さを測る「再購買」について考える。ここでも、アプローチは、「再購買の割合」ではなく、「再購買しない割合」を見てみる。

 再購買率は、申し出た際の対応に対する満足度によって異なることも、グッドマン氏が調査で明らかにしている。対応に満足した顧客の10%、仕方なく満足した顧客の30%、不満が解消されなかった顧客の60%が、再購買につながらないという。さらに、「不満を申し出ない顧客」では40%が再購買しなかったそうだ。

 仮に、不満を抱えた顧客が10万人いるとして、そのうち半数が不満を申し出たとする。対応に満足した顧客が4割、仕方なく満足した顧客が3割、不満が解消されなかった顧客が3割いたとすると、再購買しないリスクのある人は全体で3万5500人にのぼる(図3)。不満を抱えた顧客の3分の1は再購買しないということだ。顧客1人あたりから得られる収入が300ドルだと仮定すると、なんと1000万ドル以上の機会損失となる。

図3 不満足な顧客の行動


 もし、「不満を申し出た」5万人の顧客に対して、1人あたり10ドルの投資を行ってでも高品質な対応を行っていればどうだろうか。50万ドルの投資は、売上機会損失と比較するとはるかに安価であることは言うまでもない。

 なお、不満を申し出る顧客が5割という企業は稀である。不満を申し出ない顧客の割合が多いほど、また申し出た顧客が満足しなければしないほど、再購買の割合は減ることになる。つまり、不満を抱えた顧客にはできるだけ不満を申し出てもらい、それに対して「満足してもらう」ことを目指せば、再購買率は高まるといえる。不満を積極的に受け付けようとすれば、当然、対応にかかる費用は増す。だが、機会損失の低下と照らし合わせれば、それが必要かつ積極的に捻出すべき投資であることがわかるはずだ。

 最初から『不満を抱える顧客』を生み出さないことが最も大切であると、グッドマン氏は説いているが、これは現実問題かなり難しい。ならばせめて、コールセンターをはじめとした顧客接点を、「不満」から「満足」に変える最後の砦としてとらえ、サービス品質向上を経営課題とすべきではないだろうか。コールセンターは直接売り上げを創出できない組織だと思われがちだが、ここで顧客をつなぎとめること、関係をより強化することは業績に影響する。コールセンターは、業務を集約し安価な労働力で対応させる「コストセンター」ではなく、企業の顧客形成に大きな影響を与える重要な存在であると認識されるべきである。

 次回は、『顧客満足』のために、コールセンターでぜひ取り組んでいただきたいエッセンスを紹介する。

(コンピューターテレフォニー2011年10月号掲載)

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