SVのためのオペレータ指導要綱第7回(最終回)



マネジメントと現場の意思疎通を担う
SVに不可欠な“翻訳力”


SVは、マネジメントと現場の“橋渡し役”として、両者と円滑なコミュニケーションをとる必要がある。マネジメントや経営が掲げる「品質向上」「プロフィット」といった言葉は、そのまま現場に伝えても浸透しない。また、現場の不満をマネジメントに伝える場合は、提案を付加することが必要だ。いずれの場合も、“翻訳力”が不可欠だといえる。

著者:市場通信 石橋由佳

 SVの行動や発言は、コールに直接影響します。SVからオペレータへのメッセージは、「何を伝えるか」だけでなく、「どう伝えるか」も重要です。今回は「伝え方」について考えていきます。

■商品/サービスの良さを伝える

 顧客対応には、自社の商品・サービスに関する知識が不可欠ですが、導入研修や商品研修でいくら「商品の優位性」や「他社と比較したメリット」を学習したところで、肝心の“気持ち”が入っていなければ顧客にアピールできません。SVが「うちの商品は高いから」とか、「他社と比較して劣っている点があるし」などと話していれば、それは自然とオペレータから顧客に伝わるものです。

 SVは、自ら自社商品の良さを探し、研修の場以外でもオペレータに日常的に伝達する必要があります。研修で学ぶ知識よりも、SVによって日々伝えられる言葉の方が対応にあらわれやすく、顧客の心を動かすことも多いものです。

 伝えるべきは、具体的な商品メリットだけではありません。例えば、企業が顧客にどう向き合うかという姿勢や方針、ミッションなども、SVが日々魅力的に語ることで、その思いがオペレータの口と心を通じて発信されるものです。

■経営層のメッセージを翻訳する

 SVは、マネジメントと現場の橋渡し役です。コールの背景や目的、意図などをオペレータに伝達し、一方でマネジメント側には現場の声を伝えてセンター運営に活かさなくてはいけません。注意すべきは、マネジメント側と現場のオペレータでは、ものを見る視点がまったく違っており、普段使っている言葉も大きく異なる、ということです(図1)。

図1 単なる「伝言」は誤解を招く


 某通販会社の受注センターでは、モニタリングシートを導入したときに、現場がそれを「あらさがし」と捉え、「(評価の)減点をするために使うのではないか」という噂が一気に広まり、全体のモチベーションが低下してしまいました。このケースでは、2つのきっかけが原因にありました。一つ目は、モニタリングシートの名称が「モニタリング評価判定シート」という言葉になっていたため、ポジティブに受け取りづらかったこと。二つ目に、モニタリングの目的を説明する際にマネジメント間の会議で使われていた「プロフィット拡大」「弱点の克服」「スキルの適正化」「競合他社との差別化」などといった言葉がそのまま現場に伝えられていたことでした。そこで、モニタリングシートを「コールチェック表」と名称変更し、実施目的については「オペレータのスキルアップを促すことで、お客様から真の『ありがとう』をいただける回数を増やすこと」と伝えたところ、ようやく現場に受け入れられました。このように、後からフォローすることも不可能ではありませんが、互いに体力と気力を要するため始めの一歩の段階でしっかりと伝え方を考えておくことがやはり重要です。

 同社のように、「品質向上」、「プロフィット」などといったマネジメントの言葉がそのまま現場に持ち込まれていることはよくありますが、果たして現場はどこまで正しく理解しているでしょうか。例えば、「品質向上」には「お客さまの真の要望をお聞きし、対応すること」という深いテーマを含んでいたとしても、現場の言葉でわかりやすく説明しなければ、「品質向上」というスローガンだけが踊りオペレータの心には届かないこともあります。また、「プロフィット」という言葉が一人歩きするあまり、オペレータが顧客の見込み度を勝手に判断したり、強引な案内をするといったケースもあります。「ホスピタリティ」も使いやすい言葉ですが、個々人の解釈の差が大きいため注意が必要です。

 SVは、現場が正しく理解できるよう、どんな言葉を使ってどう伝えるかを、じっくりと考えたいものです。SVが、マネジメントや経営層の意向を「翻訳」して伝達することで、それぞれの言い分を誤解なくスムーズに伝えられるはずです。

図2 伝え方のポイント

不満ではなく提案を伝える

 現場の声をマネジメントに伝えるときにも、注意すべきことがあります。SVは最前線にいるため、顧客の不満要因や、顧客が魅力を感じるポイント、オペレータが苦労している点などの気づきが多いものです。それをマネジメント層にどう伝えるかが肝心です。

 先日、あるセンター長の方とお話をする機会があり、「うちのSVは文句ばかりは言ってくるけれど、提案が少ない」とこぼされていました。しかし、その文句の内容を具体的にお伺いすると、実に重要で的を射た「気づき」なのです。

 残念ながら、SVの意見は、「不満」と捉えられることが少なくないのですが、それは伝え方の問題あるかもしれません。たとえば、「方針を示してくれないので、動きがとれません」「このスクリプトではお客さまにアピールすることができません」というだけでは「不満」ですが、「こうするのはどうでしょうか」と提案を加えるだけで前向きな議論ができるのではないでしょうか。

 現場とマネジメントの意見を双方に適切に伝え、共感を得るためには、情報の持つ重要性を意識し、どう伝えるとポジティブで発展的な取り組みに変わっていくのかをじっくりと考えてみたいものです。まずは、ふだん自らの話した内容を常に振り返ってみるのもよいでしょう。何か変えることができることが見つかるかもしれません。

(コンピューターテレフォニー2012年6月号掲載)

2024年01月31日 18時11分 公開

2013年01月09日 16時58分 更新

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