~SVの自分磨き~ロジカルで行こう!第6回(最終回)



「事前の一策は事後の百策に勝る」
リスク対策こそ実行計画のカナメ


組織運営において、実行計画を立てるシーンは少なからずある。ここにもロジカルシンキングは適用される。実行計画は単にスケジュールを組めばいいだけではない。想定されるリスクを徹底的に洗い出し、予防策と緊急対策をあらかじめ考えなければならない。リスクマネジメントは「小さな出来事」にも着目することが重要だ。細やかな下準備が、「確実な実行」の実現には不可欠だ。

著者:Y'sラーニング 浮島由美子
この著者の講座はこちら

 最終回は、「実行計画」の立て方について解説します。これは、「問題解決ロードマップ」の最終段階、問題点は何かを考える「課題設定」と同様、省略できないステップです。「問題点の本質をついた課題設定」ができて、「的確な原因分析」をして、「複数案からベストな対策を選定」しても、実行がうまくいかなくては何にもなりません。絵に描いた餅になってしまいます。

 実行計画とは優先順位や手順に従ってスケジュールを作るだけでは終わりません。そのスケジュールに対して、「確実に実行できる段取りをしておく」ことが重要です。

 こんなことはありませんか。

・会議では対策の担当者は決めるが、期限や工数はあいまいなままだ
・進捗管理はするが、何日遅れているかを報告するだけである
・作業はいつも「押せ押せ」になるため、残業は覚悟している
・うまくいかなかったとき、「あぁ、やっぱり..」と感じる

 私たちは、「対策」に対しては綿密ですが、その「実行」については、流れに任せている傾向があります。しかし、「実行フェーズ」は知識や経験による予測が可能です。

 飛行機が着陸の時機内灯を消すことや、高速道路のトンネルで点灯するのは、リスクの予防対策の好例です。リスクを予測して予防しているのです。機内灯を消しておけば、有事の際に暗い場所に目が慣れているため、避難経路の誘導灯が見つけやすくなります。高速道路のトンネルは逆です。突然の暗闇に備えて最初からヘッドライトを点灯しておくわけです。

 「わかっていること」をそのままにしておいて、結果が出てから、「やっぱり!そうなると思ってたんだ」と言ってはいけません。

 実行計画の策定とは、「転ばぬ先の杖」を持つことです。「リスク」には大きなものも小さなことも含まれます(図1)。大きなリスクは、日々の実行計画以前の問題がほとんどです。ここでは「日常的に起こる小さなリスク」にも事前に目を向けることが大切です。

図1 リスクとはなにか


■実行計画のプロセス

 では、具体的に実行計画を作成するときのプロセスをまとめます。

1.最初に実行テーマを具体的に書いておく。
2.期間ではなく期日・期限を入れる。(つまり、日付は具体的に書く)
3.計画遂行に先立って実施項目を挙げ、実施計画を作成する(ガントチャートなど)
※ただし、実施計画さえ作れば“成功が保証される”わけではないことに注意。
4.リスクの想定をする。(1つひとつが具体的かつ潜在的問題を現すように明確に)
5.予防対策と緊急時用対策を分けて書く。
・予防対策とは、該当するリスクの未然防止策
・緊急時用策は、リスクが発生してしまったと仮定した時の影響軽減策

 この流れをまとめて記述しておくためのシート例は、図2を参照してください。それぞれのポイントもあらためて注意書きとしました。

図2 実行計画のプロセス記入シート


 実行計画も、キーワードはSTOP & THINKです。実行計画の立ち止まるポイントはシンプルです。「この実施項目にリスクはないのか?」――この一点につきます。

 本来、リスクマネジメントにはプロセスがあります(図3)。そのスタートラインは「リスクの予測」です。セキュリティマネジメントのような大きなリスクをマネジメントするときには必ず考えるリスクマネジメントプロセスを、問題解決時に省略してよいわけがありません。

図3 リスクマネージメントのプロセス


 「事前の一策は事後の百策に勝る」とはリコーの第三代社長、大植氏の言葉だそうです。実行計画を作成する段階で「リスクの予測と予防」を行うのは、まさにこのためです。

■ロジカルシンキングはシンプルシンキング

 全6回にわたり、ロジカルシンキングのストーリーをご説明してきました。論理的に考えるというのは、「複雑な事象を解きほぐしていくこと」です。ものごとを複雑にしているものは何かを解き明かし、シンプルに、シンプルに考えることに、ロジカルシンキングのヒントはあります。ご紹介してきたツール(手法や表)はそのお手伝いをするものです。

 問題解決が必要なことは、「大きな出来事」とは限りません。日々の「小さな出来事」を本質論できちんと解決しながら前に進むことが私たちには大切なのです。そんな皆さんの日常にお役にたてれば幸いです。

(コンピューターテレフォニー2012年10月号掲載)


この連載の一覧はこちら

この著者の講座はこちら

2024年01月31日 18時11分 公開

2013年02月22日 14時06分 更新

その他の新着記事

  • スーパーバナー(P&Wソリューションズ)

購読のご案内

月刊コールセンタージャパン

定期購読お申込み バックナンバー購入