クレーム対応のレシピ 第18回

「話のわかるヤツ」と思われるための
『要約フィードバック』のススメ


著者:JBMコンサルタント 玉本美砂子
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 「彼は私にプロポーズしたのに、Sさんとも交際をしているって聞いたんです」――「それは二股かけられてるんや~!」明石家さんまさんだったら、こういうだろう。

 テンポのいい会話には、要約フィードバック――相手の話の内容を要約して、自分の言葉で返していく技術が欠かせない。相手の話の内容を明確に理解していることを示す、お互いの認識のレベルを合わせる、さらに時間を節約するという役割を持つ。

 要約フィードバックは、クレーム対応にも効果を発揮する。「謝ったらしまいや」ではなく、特に一次応対では相手の話を要約して返す能力がとても大切だ。要約フィードバックの力があると、顧客には「この人は話がわかっている」との安心感を与える。また、クレームの記録をつける際にも的確な表現で簡潔に記入できる。

 クレーム応対における顧客とオペレータとの会話の分量についていうと、始めは1:9で顧客が多く、途中から5:5、終盤は9:1でオペレーターが多く話すという形が理想的だ。会話の始めは怒りのエネルギーを爆発してもらう。人は腹の立つことや困ったことを、口に出して誰かに言うだけでも50%くらいのストレス解消、カタルシスになる。したがって、最初は顧客に抱える不満をたくさん話してもらう。途中から事実の確認や顧客の不満への共感を示したりするので会話の分量は双方が半々、終盤は対処の方法をオペレータが話すのでオペレータの会話量が増え、顧客が相づちを打つようになる。

 会話というものは、相手が具体的な話(下位語)をしてくるとより抽象的な言葉(上位語)で応酬する、相手が上位語で話をしてくるとより下位語で答えるのが基本だ。「大きな言葉は小さな言葉にばらす」「小さな言葉の羅列は大きな話でまとめる」ということだ。

 例えば、「私、キャンプや釣りが趣味でね」「アウトドアがお好きなんですね」(下位を上位へ)「私、アウトドアが趣味でね」「キャンプや釣りに行かれるのですか?」(上位を下位へ)というようなものだ。言ってみれば、「つまり何が言いたいのですか」と「たとえばどんなことがあるのですか」を正確に聴き、話すことであり、この力が要約フィードバックの力である。

 ややこしそうに書いたが、小学生の頃からやっている“国語のお勉強”と同じだ。「~のことを作者は何と言っていますか」「~の具体的な例が書いている文の始めの5文字を抜き出しなさい」「筆者の言いたいことを選びなさい」などとやったはずなのだが、どうも国語力に乏しいオペレータさんが多いとぼやきたくなる。学校でちゃんと教えてないのだろうか?学校に乗り込み、「責任者出てこい」と言いたい。「ほんまに出てきたらどないすんねん?」「謝ったらしまいや!」


(コンピューターテレフォニー2012年9月号掲載)

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2024年01月31日 18時11分 公開

2016年06月29日 16時48分 更新

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