クレーム対応のレシピ 第11回

「聞き流すだけ」で上手くはならない!
クレームは“受け止める”ことが重要


著者:JBMコンサルタント 玉本美砂子
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 年甲斐もなくというべきか知的好奇心衰えずというべきか、苦手な英語にチャレンジした。「意味を考えてはいけない、聞くだけで身につく」という英語教材の体験版である。結果はというと、効能は人それぞれだと思うが、私の場合は何ら変化なしだった。バックミュージックならぬ“バックイングリッシュ”ではどうにもならない。石川遼君とはゴルフの腕とともに頭脳でも開きがあったようだ。

 思うに「聞き流す」だけというスタイルでは、やはり力が伸びはしないだろう。面倒くさいが「聴き止める=理解しようと考える」ことをしない限り、英語などおぼつかないのではないかと思った次第だ。

 クレーム応対でも同じことがいえる。言葉を聞き流すだけでは、反応する力は身につかない。何年も応対者をやっているのに一向に応対スキルが上がらない人がいるが、おそらくはクレームを聞き流しているのではないだろうか。一つひとつのクレームにおける顧客の意図や意味をしっかり「聴き止めて」反応する習慣を形成することができれば、スキルはぐっと伸びるはずだ。

 コミュニケーションの4技能は、「聞く」「話す」「読む」「書く」であるが、このうち、「聞く」と「読む」はインプット、「話す」と「書く」はアウトプットだ。4技能はバラバラにあるものでもバラバラに向上するものではない。「聞く」「読む」のインプットと「話す」「書く」のアウトプットが循環して、初めて情報と思考は整理され定着するのだ。簡単にいえば、聞いたこと、読んだことを人に話すときには、誰もがその情報を自分の頭で理解し、整理して話そうとする。書くとなるとますます論理の整合性や伝達の有効性を求めるはずだ。だからこそ、書く行為はもっともしんどいのだが。

 応対スキルを高めたければ、クレームを電話口で聞いているだけではなく、「整理して話す」「整理して書く」のアウトプットが必要だ。モニタリングにしても、音源をただ聞くだけではなく、気がついたことを書きとめる、人に自分の感じたことを話すということを是非お勧めしたい。「顧客の真意は何か」「なぜ怒っているのか」「このクレームに対して自分はどのように応対したか」「何をもって解決したのか/しなかったのか」――こうしたことを記録し、人と話し合う習慣をつけることだ。それが、聞き流すのではなく、聴き止める応対につながると思う。

 英語のシャワーで英語がうまくなるかどうかはわからないが、少なくとも、クレームのシャワーでクレーム応対がうまくならないことは確かだ。英語に慣れるのはよいことだが、クレームに慣れる会社や応対者は考えものだ。「クレームに慣れ、クレームを聞き流す」応対と「クレームを大切にし、クレームを聴き止める」応対との違いを、今一度よく考えていただきたい。


(コンピューターテレフォニー2012年2月号掲載)

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2024年01月31日 18時11分 公開

2016年06月29日 16時47分 更新

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