クレーム対応のレシピ 第35回

「守破離」はキホンの“守”が肝心!
原点である顧客の声を聴き直そう


著者:JBMコンサルタント 玉本美砂子
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       市川海老蔵主演の映画「利休にたずねよ」が公開中だ。今日、茶道を嗜む人は決して多くないが、こういう映画が上映されるということで、やはり日本伝統的文化が私たちの間に息づいているのだと実感する。

 さて、よく企業研修で使われる言葉「守破離」もまた、能楽や武道、茶道でよくいわれるものだ。

 「守破離」とは物事を習得するステップを言う。

「守」は師匠から教えられた型をきっちりと守ること。

「破」は型を守りつつ、応用を利かせることができるようになる段階。

「離」はオリジナル、自分独自の手法を確立する境地に達することだ。

 コールセンターの業務で言えば、守=「マニュアル・スクリプトを頭に入れ、それに沿った応対をする」→破=「イレギュラーなことがあってもマニュアルの精神を踏まえながら、機転を利かせる応対をすること」→離=「よりよい応対理論・応対手法を自分で開発、実践すること」となるだろう。

 多くの場合、大事なのは「守」のステップだ。

 「守」とは、言い換えれば基礎・基本だ。「守」をおろそかにして、「破」も「離」もない。亡くなった川上哲治さんの言うように「基本に忠実に」である。

 では、クレーム応対での基本とは、どのようなことであろうか。

それは、お客様がどのように言ったかをしっかりと聴き取り、それを検証しつつ、対応のトークを作ることに他ならないだろう。

面倒くさいことではあるが、音源を聴いて、お客様の言葉を書き写す作業をしてみるとよい。それをスクリプトやFAQとして明文化し、ロープレを繰り返すのである。そうすることで型ができる。

 企業には、暗黙知と形式知がある。

 暗黙知とは「師匠の背中を見て学べ」のように経験・体験から来る知恵を受け継ぐことである。明文化はされない。料理の鉄人の弟子みたいな職人の徒弟制度に多い。

 一方、形式知とは、論拠をもって普遍的な法則を作り、それを守ることによって皆が一定の水準に達するようにすることだ。

コールセンターもまた、個人の名人芸の伝承ではなく、組織で対応すべきで、きちんとしたルールやマニュアル作りが必須だ。

そして、そのベースになるのは、お客様の言葉・つぶやきを記録することではないだろうか。言い換えれば、クレーム応対のマニュアルの出発点は、お客様の声ということになる。


 千利休は秀吉との確執で悲劇的な死を遂げたが、その精神も技術も今日まで受け継がれている。

利休に比すのは大仰だが、SVやリーダーともなれば、クレーム応対のマインドもスキルもセンターの皆に受け継がれるような系統的なものとして確立することが望ましい。

その時、もし、わからないことがあれば「玉本にたずねよ」。なんちゃって。


(コンピューターテレフォニー2014年2月号掲載)

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2024年01月31日 18時11分 公開

2016年06月29日 16時54分 更新

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