※コールセンター実態調査:
コールセンタージャパン編集部が毎年、実施しているアンケート調査。定期購読企業を中心に約300問におよぶアンケートを実施。対象は事業会社のコールセンターマネジメント層で、原則としてBPOベンダーは除外(業務委託側は対象)。センターの規模、運営モデル、マネジメント課題、IT導入傾向、対応チャネル、VOC活動、カスハラ対策、AI活用状況などを聞いている。「コールセンター白書2025」の購入はこちら。Kindle版はこちら。
「コールセンター白書」には、2024年版から生成AIに関する回答を取りまとめ、そのトレンドを解説している。
第1回で「コールセンターの運営課題」について解説したが、2025年の実態調査で最も深刻度が高いと推察される課題は「オペレータ1人当たりの生産性向上」であり、生成AIの活用はその有効な手段として捉えられている(図1)。

深刻さを増す採用難/人手不足に対処するには、1人当たりのパフォーマンスを最大化することが最も有効である。生成AIによって、従来より課題視されていた後処理(After Call Work)において大きな時間を割いていた顧客との対話の要約・記録の大幅短縮が可能となった。実態調査においてもさまざまな企業が導入していることが明らかで、規模が大きなセンターほどその効果は大きいとされている。
実際、生成AIによる要約ソリューションは、すでに回答企業の20.5%が導入。「導入予定のITソリューション」においては、32.7%の回答企業が挙げており、すべてのソリューションのなかでトップを占めている(図2)(次ページ以降は会員登録が必要)。

図2 導入および導入予定のITソリューション
要約ソリューションは、今後のコンタクトセンター・システムにおいて基本機能となるだろう。CTIやACD、音声録音、音声認識などの音声系プラットフォームや、応対ログを記録するCRMソリューションに標準、あるいはオプションで搭載されるといった提供形態になる可能性もありそうだ。それほどニーズは高い。
一方で、チャットボットやボイスボットへの生成AI利用率はさして高くはない。ここ数年、導入ITソリューションにおいて50%前後の回答比率を占めているチャットボットは、今回の調査で「生成AI対応型」「非生成AI対応型(シナリオ型)」に分けて聞いたところ、圧倒的にシナリオ型が多数を占めている。コロナ禍で、多くの企業で導入されたチャットボットは、大多数がそのまま運用を継続していると見てよさそうだ。
チャットボットに期待する導入効果は、76%が「呼量削減」を挙げている。一方で、回答精度については「十分満足している」が2%にとどまり、「満足しているが改善の余地がある」が59%、「精度が低いので日々、メンテナンスやチューニングを重ねている」が25%を占めた(図3)。
呼量削減については、実際に「X%削減に成功」という事例記事も散見される。しかし、問題は「削減できたコールは、本当にチャットボットやFAQで問題解決できたのか」という検証が不十分である点と、「あきらめた顧客がどの程度、存在するのか」も検証できていない点にある。
チャットボット、あるいはFAQを設置していても、コールセンターへの電話番号を掲載していない、あるいは極めてわかりにくい導線になっている企業のホームページは、残念ながら数多い。とくにBtoBのSaaS(サブスクリプション型)企業は、その多くが電話によるサポートを実施していないケース(あるいはVIP級のロイヤル顧客限定のケース)が目立つ。結果的に、「問題は抱えつつも場合によってはあきらめる/サービス利用をやめる」というケースもあると推察される。これは、顧客にとって不利益なサービスーーいわゆる「ダークパターン」に近い。
また、チャットボット/FAQを利用した顧客の「その後の行動」をトラッキングしている企業はほとんど存在しない。「役に立ったか否か」をアンケートで聞く企業は多いが、回答率は決して高くはない。回答していない顧客が、本当に問題解決しているのか。全件、トラッキングするのは難しいにせよ、問い合わせ内容によっては、「実際にその手続き、あるいは購買行動を行ったのか」といった検証は可能なはずだ。生成AIなのかシナリオ型なのかを問わず、チャットボットの評価軸を「企業視点での正答」ではなく、「解決」に置く――この転換が今後のチャットボットの存在価値を大きく左右するはずだ。
昨年秋から、Google、Yahoo!などのポータルサイトでAI検索が開始されている。企業サイトにたどり着く前に問題解決するケースも増えているはずだが、AIによる誤回答を防止するためにも、「AIの回答の根拠」として表示されるコンテンツ(FAQ)の整備は最優先課題となる。顧客視点の正答がそこに表示されるような企業努力が必要で、そこにコールセンターがいかに貢献できるのか――これは2026年のナレッジ強化、チャネルハンドリングの大きなテーマとなり得る。
AI検索の開始は、「生成AIの民主化」を加速させるはずだ。結果、さまざまな業界におけるカスタマージャーニーは一変することになるだろう。顧客体験の起点としてAI活用に慣れた消費者にとって、「解決しないチャットボット」などは、“失望体験”の原因にすらなりかねない。まずは回答のベースとなるFAQなどのナレッジ強化、それらをAI検索結果の根拠として表示させる「AI-SEO」への貢献を考える必要がある。同時に、チャットボットのあり方と存在価値の検証は、2026年、運用企業はもちろん、提案するITベンダーやSIなどにとっても大きなテーマになりそうだ(次回更新は1月23日「変わるオペレータ像」の予定)。