座談会 <BPOと共創する方法・前編>
コンタクトセンター運営の委託は、「丸投げ」でない限り、悩みは尽きない。委託先の選定、稼働後のチェックや付き合い方。近年は不祥事や事件も相次いでいるだけに、受委託の関係性は見直すべきタイミングといえる。委託元の担当者と、受委託双方を経験した有識者が議論した。
<出席者>(順不同)
<モデレータ> コールセンタージャパン編集部
──BPOベンダーにコンタクトセンター運営を委託しているNTT東日本の篠田さんと、カゴメの松村さん。そして、委託元と受託元の両方の経験のある永倉さんにお集まりいただきました。まずは自己紹介をお願いします。
篠田 NTT東日本のビジネス開発本部で、当社が提供するサービス開発部門に所属しています。ITやSaaSに関連するテクニカルサポートを中心に、コンタクトセンターを活用したサービス開発や運営全般を担当しています。
私が統括する担当のテクニカルサポートは、キューアンドエー様を中心に業務委託しています。最大250席規模を依頼しておりますが、当社全体では、さらに大きなセンターを運営いただいています。顧客管理システムは、(NTT東日本が)用意した環境を使っていただき、電話設備関連は当社設備に加え、業務に応じてキューアンドエー様が導入したクラウドPBXも活用しています。
松村 カゴメの通販事業部門で、コールセンターだけでなく、システムや物流、決済などのフルフィルメント業務を管理しています。
当センターは、野菜ジュースやサプリメントなどの通販商品が注文されてから、お客様に届くまでのプロセス全般を担っております。センターでは、インバウンドとアウトバウンドを、計4社に委託しています。最大の委託先は約150席となり、通販事業全般を受け付ける窓口ダイアルと、バックヤード業務をお願いしています。
永倉 大手テレマーケティング企業、外資系生命保険会社にて、コールセンターやバックオフィスの統括、プロジェクトマネジメントのリードなどに長年従事してきました。現在は独立し、約40社の企業の顧問やパートナーをしています。さまざまな業種、業態の企業様へDX関連のプロダクトや、ソリューションの導入支援、アドバイスを行っています。
──BPOベンダーに運営を委託するメリットや目的を改めて伺います。
篠田 センター運営には、ノウハウ、構築や改善のスピード感、コスト管理の3つの観点が欠かせません。この3点をふまえつつ結果を出すためには、プロであるBPOベンダーにお願いするのが最も近道だと考えています。(BPOベンダーは)運営のノウハウを長年、蓄積しているので、拠点の立ち上げや拡張も短期で実施可能です。自社でいちから構築するよりも、設備や人員の面で迅速かつ確実で、かつ費用を抑えることができます。
いちばん分かりやすいメリットが、当社が委託しているような専門領域のサポートだと思います。自社のグループ企業も含めて、複数の委託先をマネジメントしていますが、キューアンドエー様にはテクニカル業務に加えて、人事労務や経理の知識が必要な応対業務も依頼しています。自社で両方の知識を持つ人材を集め、育成するのはかなり難易度が高い。委託することでセンターの立ち上げも早期に完了できました。
松村 同じく、さまざまな実績や、運営のノウハウを兼ね備えた企業に委託するのが、最も効率的だと思います。というのも、立ち上げ当初から質の高い応対が可能だからです。
例えば、センター運営に必要なスタッフの採用や育成ひとつをとっても、自社にはノウハウがありません。私たちは、マーケティングや企画に注力し、コールセンターの実務はそれぞれのプロにお任せしたいと考えています。さらにPBXといったITソリューションや、設備を備えた各社に委ねた方が時代に即した対応が行えると考えています。
永倉 おふた方とも、BPOベンダーを上手に選定し、良いお付き合いをされている印象です。ほとんどのBPOベンダーは、業務の立ち上げの迅速さ、運営ノウハウ、コスト感を“売り”にしています。しかし、これらを、企業の期待通りに実現していくのは難易度が高く、ベンダー企業によって差も生じます。ですから、しっかりと実践できる企業をパートナーに選び、そのうえ事業を展開できている点でも、それぞれの見極めは素晴らしいと思います。
──選定基準について教えてください。