2017年8月号 <特集>

特集扉

オムニチャネル化への扉を開く
チャット対応の業務設計

Part.1 <現状と課題>

なぜチャット/LINE対応なのか?
成否を分ける「目的」に準じた設計書の作成

チャット対応のマネジメントも、基本は電話対応と同じで“業務設計”がキモとなる。ゴールの具体化、数値化、業務量に基づくKPI管理、人材要件/システム用件の定義がポイントだ。ただし要員配置は、電話のように「業務量に基づく」のではなく、導線設計によって調整する“逆転の発想”が求められる。チャットで成果を創出するための業務設計「6つのポイント」を検証する。

 電話、メールに続く「第3のチャネル」として、チャット窓口を開設する企業が少しずつ増えている。有人対応だけでなく、話題を集めている「チャットボット」まで含めると、検討・導入企業はさらに増えるはずだ。ところが、現状では、「電話対応の合間にアサインする運用」が大半を占めており、KPIに基づいた管理や業務量予測に基づいた要員配置を実践している事例は数少ない。

 対応件数が増加すれば、CSや収益性の観点からも生産性や品質をコントロールする必要性も高まる。電話同様の「業務設計」が運営の成否を分けることになる。チャットの特性を踏まえた業務設計のポイントを解説する。

 運用の土台となる業務設計と、改善のサイクルがきちんと回れば、オペレータによるチャット対応が軌道に乗る。運用していくなかで、チャットボットで自動化できる領域も見えてくる。有人対応を先行することで、FAQの強化にAIを利用、それを利用してボットという“進化のプロセス”が明確となるはずだ。

図 業務設計6つのポイント

図 業務設計6つのポイント

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Part.2 <ケーススタディ>

電話やメールでは掘り起こせない!
「新しい顧客」との接点が生む価値

WebチャットやLINE対応を実践している事例各社から聞こえるのは、「従来のチャネルとの期待値の違い」に対する戸惑いだ。結果、対面や電話で優秀なオペレータのスキルやノウハウが通用しない局面が多い。その半面、「今までリーチできなかった顧客とのコミュニケーションが可能」というメリットも生じている。4社の先進事例からマネジメントの要諦を探る。

CASE STUDY 1:SMBC日興証券

オペレータがボットをフォロー
AIと二人三脚で対応品質を向上

 昨年、WebおよびLINEによるチャットサービスを開始。LINEは、AIを使ったチャットボットも展開している。当初の想定以上に、若年層や投資初心者からの口座開設に関する問い合わせが多く、潜在顧客の獲得につながっている。チャットボットでの対応は、オペレータがリアルタイムでモニタリングし、必要性を判断した場合は、有人対応によるエスカレーションを提案。AIとオペレータのハイブリッド運用を実現している。

図1 チャットボットとオペレータのハイブリッド対応(SMBC日興証券)

図1 チャットボットとオペレータのハイブリッド対応(SMBC日興証券)

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CASE STUDY 2:ライフネット生命保険

ボット、スタンプをフル活用!
LINEで若年層顧客を囲い込み

 ライフネット生命保険は、昨年からLINEによるチャット対応を開始。商品検索や見積もりなど用途を絞り込みボットでの対応も行っている。従来、電話による相談窓口の利用は40代以上が約6割を占めていたが、チャットは比較的より若い世代からの問い合わせが多く、保険の必要性を問うような基礎的な質問も少なくない。PUSH通知やスタンプといったLINEならではの機能も活用しながら、顧客の“温度”に合ったサービスを模索中だ。

図2 ライフネット生命保険は、内容によりボットか有人か選べる

図2 ライフネット生命保険は、内容によりボットか有人か選べる

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CASE STUDY 3:ナノ・ユニバース

「写真で見たあの服が欲しい!」
チャットで提案、来店促進

 ECサイトと公式アプリで、ログイン後の顧客を対象にチャットでの接客を行っている。オペレータは、アパレルの店長や販売経験者で、ファッションに関するさまざまな相談に対応する。ECサイトでの購入だけではなく、店舗送客の役割も担う。来店時にアプリにポイントがたまる仕組みによって、来店状況を把握。オンライン・トゥ・オフライン(O2O)の顧客動向を可視化し、ECと店舗で同等の顧客体験を提供することを目指している。

図3 ECと店舗の顧客動向を統合管理(ナノ・ユニバース)

図3 ECと店舗の顧客動向を統合管理(ナノ・ユニバース)

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CASE STUDY 4:IDOM(ガリバー)

来店前に情報収集
営業の受注率が2倍に

 Webサイト上のチャット対応で来店前の接客を行う。あらかじめ購入したい車種や用途などをチャットで聞き、店舗に連携することで、店舗における商談受注率が2倍になった。日々、導線やスクリプトを精査し、店舗送客率と店舗の商談受注率の増加を目指す。チャット窓口「クルマコネクト」は確実に、来店顧客のすそ野拡大、および商談の効率化につながっている。