京都市事案――「過大請求」発生のメカニズム

2024年5月号 <FOCUS/ビジネス>

ビジネス

コンプライアンスの欠如が生んだ
「故意性のないミス」の組織的隠蔽

京都市で発生した、コロナ関連業務の過大請求。当事者である日本トータルテレマーケティングは3月、外部専門家による調査委員会が作成した調査報告書の内容を公表した。そこには、「最初に起こった情報連携不足による故意性のないミス」を隠蔽したプロセスが生々しく記されている。背景に「人手不足」がある以上、すべてのBPOベンダー、あるいは委託側にとって他山の石といえる。詳細を検証する。

 コールセンター向けBPO市場で大きな特需が発生した新型コロナウイルス対応案件。しかし、数々の過大請求が発覚し、BPOベンダー、あるいはコールセンターという職種に対する信頼度が低下したことも、残念ながら事実だ。

 コールセンタージャパン編集部が調査した結果、自治体から返還を求められた新型コロナウイルス関連業務の元請け企業は次の通り(順不同)。パソナ(関西3市)、近畿日本ツーリスト(東大阪市他)、セントラルサービス(太田市、群馬県)、日本トータルテレマーケティング(京都市)、電通北海道&電通プロモーションエグゼ(北海道)、大塚商会(北海道石狩市)。

 このうち、日本コールセンター協会に加盟し、業界内の知名度・認知度が高いのが日本トータルテレマーケティング(以下NTM)である。同社は2024年3月、京都市の過大請求事案について、社外の専門家による調査委員会が作成した調査報告書の内容を公表した。

故意性のない「誤認によるミス」が
隠蔽事案化したプロセス

 同社がホームページ上で発表した調査結果概要は次の通り。

・途中で実施した中間報告後、新たに過大請求隠蔽のための実働時間数の水増しが判明し、京都市への過大請求額は消費税抜きの合計で8億5718万2064円と算定。

・水増し行為には同社の運用部門における複数の社員が関与し、幹部社員も、黙認していたと推測。同部門において特別なことではなくなっていたともされた。

・調査委員会は、幹部社員らが調査委員会に虚偽の供述を行っており、同社が調査に消極的姿勢であること、原資料が改ざんされると内部通報なしには正しい調査が困難であること等から、同種業務における類似の過大請求の有無の調査を中止する。

・水増し行為の主な原因は基本的なコンプライアンス意識の欠如等であるとされ、早急に行うべき方策として、再出発のための新しい体制を組織し、社内の意識改革に取り組み、過去の不正の清算を行うこと等が必要と指摘。

 図1は、調査報告書をもとに、編集部が事案発生のプロセスを時系列でまとめたものだ。そもそもの要因は、「契約内容の誤認」にある。同案件の人件費契約は、単価契約(契約時に単価だけを決め、事後に単価×実績数量で請求)だったが、現場である運用部門は、総価契約(契約時に単価と数量が決まり価額が確定している契約)と認識。結果、京都市からオーダーされた予定人員数(予定時間数)に応じて請求したが、実際は深刻な人手不足のため、予定人員数に達していなかった結果、過大請求が発生──これがいわば、最初の“ボタンの掛け違い”である。

図1 過大請求事案発生の時系列まとめ
図1 過大請求事案発生の時系列まとめ

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会員限定2024年04月20日 00時00分 公開

2024年04月20日 00時00分 更新

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