2024年2月号 <サービスのプロに聞く>

物語コーポレーション 高橋 尉哲 さん

高橋 尉哲 さん
物語コーポレーション
焼肉事業部 事業推進グループ シニアマネジャー
高橋 尉哲 さん
衣料品の販売を経験後、36歳で飲食店に転職。焼肉一番かるび 横浜栄店で、アルバイトとして3年経験を積み、副店長を経て、数多くの店舗の店長を歴任。2023年で定年を迎え、現在は嘱託社員として社員教育に携わる。

制限時間100分間で「楽しかった」を残す
“1日1組ファンづくり”で常連客を創出

 食べ放題の焼肉チェーン「焼肉きんぐ」。食べ放題というスタイルは客単価を上げることが基本的に難しい。「また来たい」と思ってもらい、リピーターを創出することが、接客の最大のミッションとなる。

 焼肉きんぐの特徴は、焼き方を指南できる『おせっかいマスター』が存在することだ。メニューの中には、焼き方が難しい厚切り肉もある。焦がさず生焼けにせず、美味しく焼くにはコツがいる。慣れない顧客に積極的に話しかけサポートすることも、おせっかいマスターの役割の1つ。お勧めの食材や食べ合わせなど、さまざまな情報も伝える。

 高橋さんは、「食べ放題に対する一般的なイメージは、“値段が手ごろだから、料理の提供が遅くても、接客がおざなりでも仕方ない”というもの。だからこそ、“食べ放題なのに、すぐ出てくるし、笑顔で丁寧で愛想が多い”と感じてもらうことが驚きになります」と接客の重要性を説明する。

お客様の期待は「楽しみたい」
1日に1組ファンを作る!

 高橋さんが20年前に初めて店長に就任した際、決めたことがある。地域で一番の店になるため、「1日に1組はファンを作る」という目標を自身に課した。

 「焼肉は、単におなかを満たす目的の食事ではなく、お客様には、『楽しみたい』『思い出に残したい』という期待があります。その期待に応えファンになってもらうには、早く出す、笑顔で接客する、だけでは足りません。どうすれば楽しんでもらえるか、お客様の反応をみながら創意工夫を重ねています」(高橋さん)

 来店客には家族連れが多い。子供が喜ぶ冗談を言い、笑顔になると祖父母や両親が喜ぶ。楽しい思い出が残った子供が、「また来たい」と言ってくれることが再来店につながる。

 夫婦が来店し、お腹に赤ちゃんがいる場合は、「3名様、ご来店です」と案内する。おなかの子が“お客様”として認知されたことに、夫婦は思わず笑みを浮かべる。

 ある、お揃いのスマホケースを持つカップルが来店した時には、「お揃いですね」と声をかけた。その顧客は、その後、来店するたびに、お揃いの品を変え、店長に気づいてもらえるか楽しむようになった。いつしか、高橋さんが交際期間の思い出を彩る人となり、結婚式にも招待されたという。

 1組の接客にかかる時間は、食べ放題の制限時間でもある100分間。料理を運ぶ時、下げる時、コミュニケーションのチャンスはたくさんある。手応えのあった顧客には退店時には名刺を渡し、「お客様のことを大好きになったので、ご連絡先を教えてください」と連絡先を交換することもある。家族の誕生日も聞き、再来店の案内につなげる。こうした地道な“ファンづくり”で毎年200組以上の「常連客」を生み出した。

このコンテンツは会員限定です。
限定コンテンツを見るには無料会員登録が必要です。

お申込み

会員限定2024年01月20日 01時22分 公開

2024年01月20日 01時22分 更新

その他の新着記事

  • スーパーバナー(コムデザイン)

購読のご案内

月刊コールセンタージャパン

定期購読お申込み バックナンバー購入