2024年3月号 <Discussion/対談>

<ホスピタリティ応対>

対談 <ホスピタリティ応対>

生成AI時代の今こそ見直すべき
「顧客に寄り添う対応」の要諦

毎年のように甚大な災害に見舞われる日本では、多くのコールセンターで被災者とのコミュニケーションが発生する。そこで求められるのが、ホスピタリティを重視した「寄り添い型の対応」だ。オペレータを「コンシェルジュ」と称する2社のマネージャーに実践ポイントを聞いた。

牧野 英幸 氏
三井ダイレクト損害保険
理事/お客さまセンター部
部長
牧野 英幸
Hideyuki Makino
前職は俳優業。現在は三井ダイレクト損保・コンタクトセンター部門の最高責任者。2022年に刷新したブランドコンセプト「強くてやさしい」の、顧客へ徹底的に寄り添うサービスの象徴であるコンシェジュデスクを推進する。
田村 梢 氏
JCBトラベル
会員サービス部 コンシェルジュデスク
マネージャー
田村 梢
Kozue Tamura
2000年に航空業界へ入社。3部門のコールセンターを経験し、14年JCBトラベルへ入社。コンシェルジュデスクにてコミュニケーター、SV、アシスタントマネージャーを経て、22年からマネージャーとして組織管理に従事。

──元旦の能登半島地震に限らず、自然災害の際は被災した顧客への対応が発生するセンターは多いはずです。こうした局面で問われるのは「寄り添い対応」だと考えられます。そこで今回は、ホスピタリティに軸足を置いたJCBトラベル、三井ダイレクト損害保険のお話をお聞きします。

田村 JCBトラベルのコンシェルジュデスクは、JCBプレミアムカード会員様からの幅広いご要望にお応えしています。センターでは、ザ・クラス・コンシェルジュデスク、プラチナ・コンシェルジュデスクと称し、約90名のコンシュルジュが、レストランや宿泊予約など、さまざまなご要望にお応えしています。

 24時間365日対応のため、能登半島地震の発生時も営業中でした。まずスタッフや拠点の安全確認を行い、テレビの報道なども確認しつつ“どこで何が起きているか”を把握。並行して、被災地へ旅行されている会員様をリストアップし、コンシュルジュが対応した飲食店の予約状況といった事前データをもとに、“どこに誰と滞在しているのか”の想定も行いました。さらに、地震発生後に被災地方面へ、これからご出発される会員様の確認を行い、ご要望に応じてお取消を承りました。

牧野 三井ダイレクト損害保険では、ネット型自動車保険を販売しています。お問い合わせには、東京都内と愛媛県松山市の「お客さまセンター」に在籍するコンシュルジュ約100名と、コミュニケータ(同社のオペレータ呼称)が対応します。補償や手続きに関するお問い合わせが増えるのは、災害から少し時間が経過してからになる傾向が強いです。1月中旬現在、お問い合わせはまだ増えていませんが、該当地域のご契約者様のリストアップは進めています。

 東日本大震災は未曾有の災害規模だったため、当時の施策では対応が難しい状況でした。そこで、お客様からの被害情報を集約し、会社全体で対応方針を構築するなど、手探りでの対応を行いました。この際に、災害時の対応方針や特別措置をまとめることができたため、今回の地震にも適応します。

──今回は、具体的にどういった対応を取りましたか。

田村 とくに被害の大きかった能登地方に滞在していた会員様はいらっしゃいませんでした。しかし、金沢市内に宿泊されていた方は大勢いらっしゃいました。そこで、おひとりずつに電話をかけて困りごとや要望をお聞きし、できる限りの対応を取りました。

牧野 当社の自動車保険では、地震に起因する損害は、補償の対象にはなりません。しかし、杓子定規な対応を取るのではなく、罹災した日にまでさかのぼり、当時の状況を詳細に伺い、お役に立てる可能性を探る方針です。

 例えば、被災によって納車予定が伸びる。あるいは、納車前に中途解約するお客様も多くいます。詳しく話をお聞きしつつ、最適な手続きの提案を行います。通常時に中途解約をする場合は、当社が定める一定の割合に乗じ、計算された保険料の返還となります。しかし、罹災などのやむを得ないケースでは、お客様の状況を鑑みて、日割り計算での返還保険料にするなどが可能です。こうした特別措置を実施するほか、未納金の督促といったアウトバウンドコールを避けるなどしています。

──有事の際の連絡や、オペレーション体制について聞かせてください。

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会員限定2024年02月16日 00時00分 公開

2024年02月16日 00時00分 更新

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