わたちゃんのかすたま~えくすぺりえんす 第107回

2024年1月号 <わたちゃんのかすたま〜えくすぺりえんす>

わたちゃん

<著者プロフィール>
職業:顧客経験価値にこだわる戦略立案&業務改革コンサルタント
過去勤めたことのある企業:日本ユニシス、日本IBM、日本テレネット
著書『ファンをつくる顧客体験の科学 「顧客ロイヤルティ」丸わかり読本』(2023年11月、リックテレコム刊)
週末の過ごし方:
<ケース1>隅田川あたりをぶらぶら散歩して浅草で飲んだくれたあと銭湯で汗を流す
<ケース2>スポーツジムでヨガレッスンを受けて汗を流す

シンガポールのデジタル技術を活用した
事例に見る「CX」のポイント

ISラボ 代表 渡部弘毅

 日中ひとりで仕事していると、ついつい部屋が汚くなってしまいます。カミさんが帰ってきたら叱られる!と思い慌てて部屋を片付けている、わたちゃんです。アドラー心理学の「課題の分離」の考えでは、「褒められるから」「叱られるから」という理由でゴミを拾うのではなく、自分の課題として自発的に拾わなければいけないのです。まだまだ修行が足りません。

 2023年10月に、海外小売事情の視察でシンガポールを訪問しました。繁華街の商業施設は、お洒落でゴージャスなつくりをしており、物価もそこそこ高く、日本以上の繁栄と豊かさを感じました。とくにシンガポール・チャンギ国際空港は、施設やサービスにデジタル技術を駆使し、これまでにない秀逸な空港体験が提供されていました。

 シンガポールの街並みは、噂には聞いていましたがゴミひとつ落ちていない綺麗な街です。シンガポールは「ファイン(罰金)・シティ」として知られ、さまざまな行為に対して罰金を科すことで有名です。この国の厳しい罰金制度は、公共の場所を清潔に保ち、社会秩序を維持するためのものです。

 個人的には、清潔なのはいいけど罰則によってしばられている国ってどうなんだろう、と思っていましたが、視察先の商業施設や空港であるものを見かけました。

 それは、「トイレの満足度調査システム」です。トイレの出口に、利用者が評価する機械(モニター)が設置され総合満足度をボタンを押して4段階で評価をします。ここまでの評価機器は日本でも見かけることがあります。さらに興味深いのは右下にQRコードがあり、利用者が自分のスマートフォンで読み取ると、詳細なネガティブ/ポジティブ体験をフィードバックするサイトに誘導される仕組みとなっています。

 入力されたフィードバックはリアルタイムでモニタリングされ、床が汚れているなどのフィードバックあれば、スタッフが即対応するといった仕組みです。デジタル技術を使って即時に清潔な環境をキープする取り組みを実現できているわけです。

 同様にデジタル技術を使って清潔さをキープする取り組みとして、チャンギ空港ではゴミ箱の量をセンサーモニタリングして満杯になる前に対処しているといった事例もありました。

 いずれも、ちょっとした工夫のデジタル技術適用例です。しかし、罰則だけに頼らず、デジタル技術を使ってリアルタイムに清潔さをキープする試みに積極的に取り組む姿勢は、国の文化になっているのだと感心させられました。

 ということで、僕の部屋を清潔にキープする取り組みも、叱られるからではなく、モニタリングの仕組みを導入することを検討しようかと思いましたが、やっぱりあの不機嫌そうな顔を頭に浮かべるのが、最も効果的なんだろうな。

図 トイレ清潔さ調査(筆者撮影)

図 トイレ清潔さ調査(筆者撮影)

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2024年01月31日 18時11分 公開

2023年12月20日 00時00分 更新

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