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第2回
待ったなし!? 中小センターでのカスハラ対策・どうAI活用する?
中小企業こそAI!「小規模センターのための実践・AI導入ガイド 」
音声ソリューションを手掛けて25年。アドバンスト・メディア、Automagi、ベリントシステムズを経て、株式会社IVRyの「既に一般企業でボイスボット6万アカウント採用」+「最高の技術を、すべての人と企業に届ける」というミッションに感化され、定年間近の58歳で同社へジョイン。これまでエンタープライズ市場で培ったAI音声対話ソリューションの経験を生かし、AIソリューションを日本中に届けるべく邁進中。趣味は、若さ維持のカレーとバンド活動。
■初めに
皆様こんにちは!IVRyの森脇 健です。
「中小企業こそAI!小規模センターのための実践・AI導入ガイド 」として全6回連載でお送りしております。このコラムは大規模コンタクトセンターのAI活用だけでなく、日本を支える中小規模センターでのAI活用を前提としたトピックをお送りしております。
今回は「第2回 待ったなし!? 中小センターでのカスハラ対策・どうAI活用する?」をお送りします。
2026年10月1日、改正労働施策総合推進法が施行され全国的にカスハラ(カスタマーハラスメント)防止対策が義務化されました。
・従業員がいたら該当
「労働者を1人でも雇用しているすべての事業主(事業者)が対象となり、企業規模の大小や業種を問わず、一斉に対応を行う法的義務」ですから従業員がいる企業は対応を行う必要があります。
連日ニュースでも取り上げられ、「うちの会社も何とかしなければ」と焦りを感じている経営者の方も多いのではないでしょうか。
大規模コンタクトセンターであれば、専門の対応チームや部門が対応を進めていることも多いでしょう。しかし、本連載の対象である1〜50席程度の中小企業や小規模受電業務ではどうでしょうか?
改正労働施策総合推進法への措置義務違反そのものに対する刑事罰はありません。ただし、厚生労働大臣による助言、指導又は勧告の対象となり得ます。勧告を受けた事業主がこれに従わなかったときは、その旨が公表されることがあります(労働施策総合推進法第42条)。公表されることで、事業に大きな影響が出るのは想像に難くありません。
また、厚生労働大臣は措置義務に関して必要な事項の報告を求めることができ、報告をしなかったり虚偽の報告をしたりした場合は、20万円以下の過料の対象になります(同法第45条・第51条)。※過料は報告をめぐる違反に対するもので、カスハラ対策をしていないこと自体への制裁ではありません。
・先ずは基本を知りましょう
先ずは「改正労働施策総合推進法」のカスハラ対策について学びましょう。
考え方の基本となる二つの資料をご紹介します。必ず一読頂き、ガイドラインとして保存してください。
【1】 政府広報オンライン:カスハラとは?法改正により義務化されるカスハラ対策の内容やカスハラ加害者とならないためのポイントをご紹介
【2】 厚生労働省:カスタマーハラスメント対策の義務化
・”カスハラ”の定義
カスハラ定義は下記の①~③が満たされた場合、カスタマーハラスメントとして成立します。
①「顧客等」の言動が
②社会通念上許容される範囲を超えて
③労働者の就業環境を害す
これは電話だけでなく、SNSやインターネット等、手段を問わず顧客とのタッチポイント全てに該当します。
重要なのは”苦情の全てがカスハラに該当するわけではない” という事です。 ”障害者から不当な差別的取扱いをしないよう求めること” や、”社会的障壁の除去” を必要としている旨を意思表明すること自体は、カスハラには当たりません。各用語の定義等は、上記の【1】,【2】をご覧ください。
・最低限何をすれば良いのか?
先ずは事業主がこの定義を理解し、”基本方針”を決めて、業務/体制づくりや啓発活動を進めます。
手始めにインターネットで”カスハラ方針” と検索して他社の取り組み例を見てみてください。
そして下記のような取り組みを進めていきましょう。
①”基本方針”の明確化と周知・啓発
②相談体制の整備
③事後の迅速かつ適切な対応フロー可視化
④ 抑止のための措置(店舗・現場対応)
⑤そのほか併せて講ずべき措置
この詳細も上記の【1】,【2】の二つの資料をご覧ください。
・今起こってること
一次対応を行う現場のオペレーターや担当者が、理不尽な暴言や長時間の拘束に直接晒され、精神的に追い詰められてしまうケースが後を絶ちません。 かといって、「カスハラが怖いから」と電話口でガードをガチガチに固め、お客様をたらい回しにしたり、冷たい対応を決め込んだりすれば、企業の信頼やCX(顧客体験)は一気に失墜してしまいます。
またカスハラ該当した中にも、悪意を持って電話をしてくる”意図的カスハラ”と、電話がつながるまでの待ち時間・手間・解りづらさで不満が爆発してしまった ”誘発的カスハラ”が混在する上、サービス改善を指摘している正当な要望も存在します。
前述のカスハラ3要素+業務視点でしっかり判断しましょう。自由な顧客体験(CX)を落とさずに、大切な現場の働く人々を守り、全員がハッピーになる仕組みをどう作るか? ITやAIを使う前提で考えてみましょう。
・カスハラ対応の為のIT/AI技術の活用
IT/AIをどう使うか?は、明確化した”基本方針”を元にどう使うか?を考えてみましょう。
この時、下記のようにオペレーターを起点にAI/IT活用を考えると理解しやすいです。

・オペレーター接続前:ボイスボット活用でブラックリスト判定・着信・転送制御等
・オペレーター接続中:応対支援ボイスボット、リアルタイムモニタリングで通話を監視
・オペレーター接続後:全ての通話を分析・分類してカスハラ対策・対応を企画
この観点で少し考えを掘り下げてみましょう。
※その前に第1回で解説した”中小規模でAI導入を成功に導く「はじめの準備」”の考え方がここでも役立ちますので、ぜひ再読ください。
【オペレータ接続前】自動応答AIで理不尽な感情の防波堤
カスハラ疑いのある顧客等から電話がかかってきた際、いきなりオペレーターにつなぐのではなく、発信者番号やAI自動対応で要件を判断し、オペレータにつながる前に一次受付として防波堤を築く。
AI対話が発達した今、着電後、先ずはAI自動応答(IVR)→要件・連絡先をAIが聞き取り→担当者が内容確認後 に企業側から折り返し連絡・・・ という対応を行っているケースが多くなっています。
特別な設備もなしで、利用も月数千円~と安価に利用できる時代です。応対は全て記録に残るので、トラブル時の記録としても活用可能です。 もう使わない手はないです。
人間の怒りのピーク秒数は6秒と言われています。 AIが応答すれば6秒程度は経過し、電話してきた側も少し落ち着いて、話ができます。冒頭から怒声を浴びせられるリスクを劇的に減らすことができます。
また、「対応品質向上のため、通話を録音しております」という事前ガイダンスをAIが自動で流すだけでも、悪質なカスハラに対する強い抑止力となります。
【オペレータ接続中】応対中のリアルタイム文字起こし+分析・感情解析で見守り
通話が始まったら、AIが会話内容をリアルタイムでテキスト化し、表現や”両者の感情”を解析して数値化します。特定のNGフレーズ(脅迫めいた発言や暴言)やネガティブなやり取りをAIが検知すると、管理者の画面に即座にアラートが飛ぶ仕組みです。 これにより、管理者は「あ、あの席でトラブルが起きているな」とすぐに察知し、通話をモニタリングしたり、素早く交代(エスカレーション)等のフォローが可能です。
現場オペレーターに「一人で抱え込まなくていい」という大きな安心感を提供できるのです。リアルタイム音声認識での通話可視化は多くのセンターで ”見守ってくれてる様で安心”という定性効果が確認されています。
【オペレータ接続後】応対後の正確な要約と分析活用
通話終了後、「自動要約&証跡保存」で精神的負荷と後処理業務を軽減します。誰しも「辛かったやり取りを、もう一度思い出しながら要約して記録」するなんてやりたくないですよね。
AIが発達した現代では、AIが客観性をもって対話音声を自動要約し、通話記録 / 分析用のデータとして保存していきます。これはトラブルになった際、「言った言わない」の防止にも役立ちますし、今後の対応検討・改善にも活用出来ます。
ここから見出す視点は下記の三つの”何?”が基本です。
a.カスタマーの不満=CX(お客様体験)の改善点は何?
b.もっと伸長すべき業務は何?
c.従業員に貢献できそうな事=EX(従業員満足を上げること)は何?
これに加えて、カスハラ観点では下記が可能になります。
d.通話の管理→音声保存と通話の要約記録は基本です。
e.なぜカスハラ事案になったのか?の理解→これはAI分析が大いに役に立ちます。
意図を持ったクレーマーだったのか?
話の流れでカスハラ事案になってしまったのか?
こちら側の不手際が原因だったのでは?etc…
・カスハラ対策のAI活用
ご覧いただいた様に、施策によりAIの使い方が変わります。
最近の生成AIは、これまでテキストマイニング等を使って分析担当が苦労して行っていた分析作業をあっという間に遂行してくれます。 そして、なぜそうなったのか?という推論もエビデンス付きで示してくれます。 この”AIの分析結果と推測した提案” を業務担当者がどう判断して、どう実行するか?が実は大変重要なのです。そうです、最後は人が判断を決めるのです。
・まとめ
迷ったら基本に立ち戻りましょう。次の2点が重要です。
方針①:「個人の対応力」に依存せず「仕組み(組織)」で守る
理不尽なクレームを受けたとき、「対応したオペレーターの話し方が悪かったのではないか」と個人の責任にしてはいけません。毅然とした組織的対応と、それを支えるツール(仕組み=ITやAI)を活用することが不可欠です。
方針②:CX(顧客体験)とEX(従業員体験)の両立
カスハラ対策とは、お客様を疑うことではありません。大多数の「困っている正当なお客様」にはより迅速に心地よい対応(CX)を提供し、ごく一部の「理不尽な悪質者」に対してはシステムで毅然とブロック・記録し防御する。従業員には安心して働いていただけるように尽力する(EXの向上)。
CX向上とEX向上は、二者択一ではなく同時に達成できるものなのです。
”仕組みとルール”を実現すると、「防犯カメラが見守ってくれているような安心感」が生まれ、精神的ストレスが激減します。離職率が下がり、安心して長く働ける環境が整います。
実は海外では ”EXが向上しないとCXは向上しない” とまで言われています。
不満をもっている不機嫌な従業員がお客様応対しても良い応対は望めませんよね。
2026年10月1日の施行をきっかけに、「難しそうだ」「費用がかかりそうだ」と身構える必要はありません。
第1回でお話しした通り、まずは 月数千円で可能な「通話自動応答・録音」、「時間外の自動応答」や「1つの窓口での録音ガイダンス+AI文字起こし」といった、小さな範囲(PoC)から始めてみてください。 AI活用を一歩踏み出すだけでその後の受電業務もカスハラ対応も大きく進化します。
AIは人間の仕事を奪うものではなく、現場で頑張る大切なスタッフを理不尽な暴力から守り、温かい対話に集中してもらうための「頼もしい盾」であり「相棒」なのです。
次回は、「第3回 クラウドで始めるAI-でもそもそもクラウドって何?」をお届けいたします。
AI活用の基盤となるクラウドについて、分かりやすく解説していきますのでお楽しみに!
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