
再開発が進む東京・八重洲。その一角にコミュニティ・バー「THE FLYING PENGUINS」はある。
連日、バラエティ豊かなイベントが開かれる店内は、多種多様な人が集う。運営する弦本ビル 弦本卓也さんは、“コミュニティは設計できる”と考える。「コミュニティは、人が自然に集まるものではなく、どういった人が関わり、関係を生むか。これらは、ある程度は作ることができます」。
弦本さんがこの考えに至ったのには、2015年に27歳で東京・神保町の中古ビルを購入した経緯がある。当時、不動産メディアの企画や運営に関わり、ユーザーの視点を実体験として理解したいと、入居者を集め、シェアハウスやコワーキングスペース、飲食店が入るビルオーナーとなった。入居者集めはそう簡単ではなく、100人以上は声をかけたそうだ。
すると、徐々に人が集まり、イベントという場が生まれ、入居者同士の交流へと展開していった。弦本さんはこの時、「ビルの修繕を手伝ってもらうなど、入居者が関われる“余白”を作りました。余白があることで、人が関わり、交わる場ができると考えたのです」と振り返る。さらに、「最初に誰が入るか」も重要だという。「初期メンバーの性質により、その後の雰囲気が左右されます。だからこそ、初めから“どんな人に関わってもらうか”を意識していました」。
この経験から弦本さんは、コミュニティの本質を「人と人の関係性の連鎖」と捉えるようになる。空間や仕組みの設計も重要な要素だという。「誰がいて、どんな距離感で関われるのか。立ち止まって会話が始まるなど、偶発的な出会いが生じる導線はあるか。こうした要素を組み合わせることで、関係性は生まれやすくなります」。すなわち、コミュニティとは「人を集める」のではなく、「関係性が生じる確率を高める場」だろう。
現在、弦本さんが運営するのが、THE FLYING PENGUINSだ。
“場”を八重洲・日本橋・京橋の“YNKエリア”に移し、新たな人のつながりを生もうと尽力している。
「以前は“一棟のビル”でしたが、今は“エリア”をいかに面白くするかに取り組んでいます。人が集まり、関係性が生まれることで、街の価値が変わっていくと考えています」
弦本さんが運営に携わるようになり、約2年が経つ。存続の理由を、「イベントはきっかけにはなりますが、それだけでは足を運び続けてはもらえません。日常的な関係が生まれる状態をつくることに重きを置いています」と説明する。
コミュニティ運営は、短期的な収益だけで見れば、手間も費用もかかる。「理想だけでは続きませんし、収益のみを追っても集客はできません。両方を成立させる必要があります」。そこで取り入れたのが、“1日店長”という仕組みだ。特定の人に依存せず、イベントごとに異なる人が店長を務める。