コラム
第18回
しばらく自宅から離れて暮らしている。
修繕することになり、水回りが一切使えなくなるので、その間は引っ越さざるを得なかった。そこで身の回りの品だけをトランクに詰めて引き移った。せっかくの機会だからと職場の近くにしたが、慣れない土地での仮暮らしは、どうも不便が多い。
まず、当たり前だが、日常の必需品が足りない。自宅ならすぐ手にできるものがない。例えば料理で「ここで調味料を効かせたい」と思っても、自宅なら常備している調味料がないのである。これが料理好きには痛い。かといって荷物も増やしたくない。
必需品ぐらいは買うが、土地鑑がない。スーパーマーケットなどの場所はわかるが、品揃えがわからないので、欲しいものを扱っている店舗を探し回ることになる。
ゴミ出しなども戸惑う。自宅は、不燃ごみが週1回、ビン・缶は隔週。ここでは不燃ごみが隔週、ビン・缶は毎週である。酒好きだからビンや缶の回収が多いのはありがたいが、仮暮らしでは、間に合わせに購入するものが多いので、プラスチック製品などの不燃ごみがたくさん出るのである。
環境が違えば、課題はそれぞれ変わる。今更ではあるが、やはり「慣れ」とは恐ろしい、と実感した次第だ。コンタクトセンターでは、これが時にクレームを生む。
会社主催イベントの参加者から、遺失物の問い合わせがあった。応対したオペレータが、自分で解決しようと必死になり、上司や他部署まで巻き込んで駆け回り始めた。だが、どうもおかしい。受け取りの話にならないのである。遠隔地ではないかと思い、先にお住まいの地域を確かめるよう指示したのだが、オペレータは社内への確認に夢中で、耳を貸そうとしない。それでも何とか対応が決まり、受け渡し方法を確認しようとして、オペレータの目が点になった。お客様は海外在住者だったのである。
さすがに海外に遺失物を届けるサービスはしていない。国内で受け取れる先を確認するなど、すべてがやりなおしになった。高額な電話料金をご負担いただいたうえに、いったん案内した内容をすべてひっくり返したのだから、お客様の混乱ぶりは激しかった。しかも、そのあとがよくなかった。オペレータは「最初におっしゃっていただければ……」と言い訳してしまったのである。それで、クレームになってしまった。
イベント参加者であれば、遠隔地在住であることは容易に想定できる。だから、「5W1H」は、最初に確認しなくてはならなかった。手順を怠って、慣れと思い込みで対処した結果、事態を混乱させてしまったのである。こういったケースは、案外、長年のオペレータ経験者にも散見される。
お客様は、優秀なプレゼンターでも、講釈師でもない。必要なすべての要素を、わかりやすく、効率よく、ご説明いただけるなどと思ってはいけない。オペレータは、まず用件を整理して聞き取り、全体像をイメージしたうえで、必要な要素を聞き出さなくてはならない。そのために、オペレータへの教育と注意喚起が欠かせないのは言うまでもないが、コンタクトセンター管理者にも、不要なクレームにつながる「慣れ」への警戒意識が必要だ。