コラム
第170回
最近、コールセンターの方と会話をすると、「サポート担当者による電話対応履歴の入力をやめた」という企業が増えています。私がコールセンター運営に携わっていたときは、分かりやすい対応履歴の記述は非常に重要で、同じ顧客から後日入電があった際に別の担当者が円滑に対応するための生命線でした。
当時、対応履歴の入力方法はサポート担当者によって異なり、要領のよい担当者は顧客と会話をしている最中に入力するので後処理時間は短く、すぐに次の電話に出ていました。反対に、通話中は顧客対応に専念したい担当者は、通話終了後に録音された音声を聞き、メモ書きなどを見ながら、同じ顧客から入電があった際にも、ほかの担当者が困らないよう、時間をかけて対応履歴を入力していました。前者と後者の違いは、後処理時間に如実に表れました。1時間に何十本も電話を取る担当者と、数本しか取れない担当者という違いが生じます。そのことが、入電量の多いコールセンターを運営する管理者の悩みのひとつであったと記憶しています。後処理時間の削減を目的に、担当者による対応履歴の入力を廃止している企業には、(1)通話録音をテキスト化して保存し、再入電があったときに読み返せばよいと割り切っている、(2)テキスト化した通話内容をAIなどで要約して箇条書きにしたり、顧客の架電目的や環境情報などを構造化して保存し、後からでも読みやすくしているため、担当者のチェックは省略している─の主に2パターンがあります。いずれも後処理時間を減らすことができ、担当者による受電件数のバラつきも減らせているようです。しかし、前者は、問い合わせが1回の電話対応で完結し、顧客の再入電がほぼ発生しないセンターであれば、コスト削減の効果があると考えられますが、そのぶんナレッジの蓄積が難しくなります。また、後者については、入電量に対する受電体制の確保が難しい場合や、担当者によって後処理時間のバラつきが大きいセンターに対して、受電率の向上につながると考えられます。ただし、担当者のスキルアップにつなげることは難しくなります。
顧客の立場で考えると、電話を再度かけた際に、過去の入電内容を確認するために長時間待たされたり、不正確なコール履歴により過去のやりとりを最初から説明することは、満足度が大きく低下します。近年、音声を自動的にテキスト化するAIを使い、テキストを要約する技術が日々、大幅に進化していることに驚かされます。しかし、すべての顧客が正確に専門用語を使い分けて質問をする、主語や目的語を省略しがちな日本語という性質を踏まえつつ、通話テキストや文脈から解釈して正確な要約を作成することは、まだ難しいでしょう。こうした状況から、顧客と会話をした担当者による最終確認を省略すると、顧客満足度の低下に直結する可能性があるので注意が必要です。AIや自動化を導入する際は、担当者のスキルアップや顧客満足度の向上を最優先にして考えることが重要です。