直近のCS関連ニュースのなかから、興味・関心を惹いたものを独自にピックアップする「CS News Watch」。今回は、「AIファースト型Webサイトの登場について取り上げます。
これまでのコンタクトセンター向けBPOサービスの主役は、「人材」だった。
オペレータ、SV、QA、トレーナー、センター長など、コンタクトセンター業務すべてを組織として受託し、委託側はそれを管理する(ただし、指揮命令権はない)。必要な設備は、委託側が用意するオンサイト型もあれば、それも丸ごと委託する完全なアウトソースのケースもある。ひとつの設備(センター)で複数企業の業務を請け負うシェアリング型センターも、とくに中堅中小企業向けでは機能している。受託側で人材が不足している場合、異なるBPOベンダーを活用する「再委託」も珍しい話ではない。
しかし、昨年から今年にかけて、「AI-BPO」というべき新しい形のBPOサービスをリリースする企業も出てきた。たとえばAIセキュリティソリューションズは4月、「AI BPO ITサポート代行サービス」の無料トライアルを開始した。
大手BPOベンダーも、同様の動きが活発だ。ベルシステム24は昨年12月AVILEN、親会社の伊藤忠商事と業務提携し、AIエージェントのオーダーメイド開発や実装、AI人材へのリスキリング、BPOを包括的に支援するソリューションを提供開始している。これもAI-BPOのひとつといえる。
もともと、大手BPOベンダー各社は、従来の「パーコール/パーヘッド」といったビジネスモデルから、クラウドや生成AIを活用したプラットフォーマーへの転身を図っている。AI-BPOはその流れから考えると当然、生まれるべくして生まれたサービスといえる。
生成AIが従来のITソリューションと決定的に異なるポイントは、「業務に溶け込むソリューション」である点だ。ITベンダーに開発や更新を丸投げし、仕様固めを情報システム部門任せにして有効に活用できるタイプのソリューションではない。言い換えれば、「現場を知悉している人材のAI人材化」が欠かせない仕組みといえる。
しかし、日本の産業人口構造は、よく知られているように、事業会社にIT人材が豊富に揃う構造ではない。ITベンダーやSIに集中しているのが現状だ。大手コンサルティングファーム、PwC Japanグループが実施した調査では、活用効果について「期待を大きく上回っている」という回答は米国の45%に対し、日本は10%にとどまっている。推進において直面している課題は、「必要なスキルを持った人材がいない」がトップを占めている。
生成AIソリューションの開発や活用は、従来のITのように高度なプログラミング知識が必要というものではない。その代わり、「現場業務に関する知識やノウハウ」がどうしても必要で、かつ「それを変える必要がある」という、課題の深刻さを体感していることをポイントとして挙げる識者が多い。コンタクトセンターでいえば、SVやチームリーダーなどが該当するだろうが、彼/彼女たちはあまりにも多忙でリスキリングに要する時間を持てないのが現状だ。また、組織文化として「受け身体質」である点は否定できず、意欲的かつ自発的に新しい技術を学ぶという習慣が身についていないという課題もある。
AI-BPOは、現場業務の理解度が極めて高いBPOベンダーに人材のみならず、AI活用まで委託するという運営モデルだ。かなり大きなニーズがあると推察され、今後、BPOベンダーにとって大きな収益源となる可能性は高い。もちろん、アプリケーションやプラットフォームを提供するITベンダーにとっても大きなビジネスチャンスとなり得る。
しかし、中長期的な視野に立つと、事業会社にIT人材が揃っていないという課題は残り続ける。今度は、それが「AI人材が揃わない」に変わるだけだ。
あるデジタルサービス提供企業では、もともとCS部門の主力をBPOベンダーに委託していたが、全社的にAI活用が経営からのミッションとなった段階で、「業務プロセスがブラックボックス化していて、AIの適用範囲が判然としない」という点が課題として浮上。内製化を進めたという事例もある。また、大手金融機関の事例では、全体の導入支援はSIが担当したものの、プロンプト作成はカスタマーサービス推進部が一手に担当したケースもある。
AIが業務に溶け込む存在である以上、現場のプレイヤーやマネージャーにAIの知識やノウハウが蓄積されないことは、大きなデメリットとなりかねない。
AI-BPOを活用しつつ、指揮命令はしないというコンプライアンスを遵守しながらという条件下で、その成果やプロセスをいかに共創・共有し、事業会社の現場に「AI人材」をどう育てるか。今後の大きな課題といえそうだ。(矢島)