3月24日(火)、経済産業省と国立研究開発法人新エネルギー・産業総合開発機構(NEDO)が主催する懸賞金活用型プロジェクト「GENIAC-PRIZE」の最終審査会が開催され、カスタマーサポート領域の受賞企業が決定した。

GENIAC-PRIZE生成AI基盤技術の開発を支援する「geniac」プロジェクトの一環で、2025年度は「カスタマーサポートの生産性向上」以外に「製造業の暗黙知の形式知化」「官公庁等における審査業務等の効率化に資する生成AI開発」「生成AIの安全性確保に向けたリスク探索及びリスク低減技術の開発」が対象となった。懸賞金額は総額約8億円という大型プロジェクトだ。
カスタマーサポート領域は全56申請が集まり、懸賞金5000万円を獲得した1位企業は、未来都/newmoの「タクシー配車業務のAI音声対応」。
タクシー配車は、かなりスマホアプリ活用が浸透していると思われている業務だが、まだ利用全体の20%強で、地方によっては5%に満たないエリアもある。newmoでは、このアプリでカバーできない電話による顧客からのオーダーをボイスボットで受け付け、配車する仕組みを開発し、着信100%、配車率も大幅に向上するなどの成果を挙げている。
ボイスボット事例は他にも申請があったが、審査会では高い音声品質とAI配車エージェントとの連携性の高さ、そして何よりも実証実験段階の申請が多い中、すでに本稼働して一定の成果を挙げている点が高く評価された。
こうした手続き系の用途に限定した顧客対応は、生成AIと極めて相性がよいと推察される。定型的なやり取りのため、顧客が発する言葉を推察しやすいので誤認識もある程度、教育でカバーできる可能性が高い。FAQなどをベースにした「問い合わせ全般」の対応よりも自動化しやすく、ハルシネーションのリスクも低いだろう。また、アプリを使えない、苦手とするのは往々にして高齢者であり、電話との親和性は極めて高い。市場のニーズを捉え、「高齢者の移動手段」という社会課題に挑んだ見事な施策といえよう。
しかし、タクシーの配車に関しては、その「アプリでカバーできない範囲」の広さと業務の複雑さが大きな課題とされているのも事実だ。
タクシー配車のノウハウは、例えばタクシーの台数が豊富な都市圏と過疎地をはじめとした地方では、大きく異なる。原則としてオーダーに近い順にタクシーを割り当てればいい都市圏と比べて、そもそもタクシーの台数が少なく、需要と供給のバランスが取れていない地方では配車のメカニズムが違う。
タクシーは、都市圏ではビジネス移動が最もイメージされるが、地方に行けば行くほど、生活インフラ化する。鉄道やバスが1時間に1本程度しか走っていないエリアは、日本中に点在している。そこに生活している高齢者ーーそれも運転免許を返納したようなケースーーは、日常の買い物も通院もタクシーに頼らざるを得ない。しかしその高齢者はスマホアプリの利用が苦手で、かつタクシー台数が少なく、アプリや自動音声で「配車できる車両がありません」となった場合、途方に暮れるのは目に見えている。どうしても「人の対応」も必要だ。
徳島県に本拠を持つ電脳交通では、「AIやアプリでは、地方の利用者の細かいニーズに応えるのは難しい」として、それを電話対応のBPOサービスとして提供し、数多くのクライアントを獲得している。詳細はこちら。
アプリを使えない、苦手な利用者を電話(音声)で支援するという目的はnewmoも電脳交通も同じで、その手段として生成AIを利用するのか、それともBPOとしてビジネス化するのかというアプローチが違うだけだ。今後は、この2つを組み合わせた「共創」も期待できそうだ。
音声対応型AIと人材によるBPO(あるいはコールセンター)ーーこの2つのアプローチは、タクシー業界だけでなくさまざまな市場で共創関係になっていくだろう。(矢島)
