
ワインショップ・エノテカ 大阪店・グランフロント大阪店の2店舗で店長を務める山﨑大地さんは、2024年「エノテカ・グッドサービス・コンテスト」のグランプリ(グラン・コンシェルジュ)に輝いた。コンテストは、社員の接客力と専門性の向上を目的にエノテカが21年から開催。例年、100名を超える応募がある。筆記や実技、“推しワイン”のプレゼンテーションと、最終審査への道のりは険しい。
その頂点に輝いた山﨑さんには、顧客を笑顔にするとっておきの“技”がある。ここぞという時に、「子持ちししゃもと白ワインをそのまま合わせたら、本当に合いませんでした。魚卵の臭みが出て、非常にししゃもが苦くなり、ワインの風味がすべて飛びます。絶対にマネしないでくださいね!」と、失敗談を披露。顧客を笑顔に変えてしまう。
これには、山﨑さんの「究極のコミュニケーションは笑顔」という持論が関係する。学生時代から接客業に通算20年近く携わり、「人を笑わせることは、なかなか大変。笑うとは、警戒心を解くことだからです。しかし、一度笑ってもらえると、そこから話が弾みだします」と述べる。
そして、失敗談を話すのは、「ワインのプロのソムリエも、シンプルな失敗をすると知れば、お客様の心のハードルが下がり、笑顔も生まれやすい。会話が弾みやすくなるだけでなく、私やワインに親しみを感じていただきたいのです」と思いを語る。
そんな山﨑さんは、接客時間を約10分に設定している。
内訳は、「6分程度で商品説明といった接客。残り4分がお会計などクロージング。長くても15分以内には、お店を出ていただける流れが理想です。この際、“寄り添いつつも適度な距離感”が欠かせません」。
適度な距離感とは、「ひとつは、入店したら、絶対に買わなければいけないイメージを植え付けないこと。もうひとつが、“いらっしゃいませ”と挨拶した後は、一旦引く姿勢。これらを大切にしています」。つけ加えると、一旦引きながらも、「お客様を見守っています」という姿勢を示し、決してつきまとう接客をしないことがポイントになる。
山﨑さんは、この距離感に気づくまでは、お薦めトークをしながら、顧客の横に付く「ガツガツした接客をしていた」。
「入社から5年目の頃です。ワインの知識がある程度つき、エノテカでの接客も慣れて、余裕も出てきました。希望して副店長にもなりましたから、店舗の売り上げも意識しなくてはならない。そこでこの機会に、自分の接客を顧みてみました。すると、自分がされたら“うっとうしい”と感じました。そこから、たくさん話したい方には話をする。そうでない方は見守り、必要に応じて話をする。お客様をよくよく見て、寄り添う応対ができるようになっていきました」。
顧客を観察することで、応対スキルも向上し、商品を薦める理由を明確に持った接客もできるようになった。「満足感や納得感を持って購入いただけているかが、お客様の顔つきから判断できるようになりました」という。
ワインといえば、奥深い知識が求められる。山﨑さん自身も、知識を探求することに魅力を感じ、現在の道を選んだ。
しかし、新人時代は、「用件の分かる別の人に代わって」と、エスカレーションを求められる場面もあった。
「社歴が浅い頃は知識も薄い。さらにワインは、隣り合う畑でも味わいに違いが出るほど、特異で希少な品もあります。飲んでみて初めて分かることもある。つまり、経験値が左右する部分も否めません。わからないときは素直に、“調べます”とその場で調べる。さらに、“どんな場面で飲みましたか”など、お客様の話をよく聞き、自分の糧にしました」
こうして知識も経験も重ねていき、今では数十万円を超える高級ワインを扱う有料セミナーを開催するまでに至る。「セミナーでは、集まってくださったお客様に、テイスティングをした感想を即座に表現します。アドリブにも強くなり日々の接客にも生きてきます」。
考え、挑戦した日々が、受賞という形に表れた山﨑さん。コンテスト開催の意義“わざわざエノテカに来たくなるショップづくり”のために、今日も店頭に立つ。
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