「ユーザーはCX(顧客体験)において、これまで以上にデジタル化され、なおかつパーソナライズ化されたサポートを求めている」。そう語るのが、CCaaSソリューション「Genesys Cloud CX」を提供する米Genesys社で、Customer Engagement & Advisoryを務めるJanelle Dieken(ジャネル ディーケン)氏だ。同氏は、消費者を対象とした調査「Generational dynamics and the experience economy」を担当、各世代のCXに関する価値観についてまとめた。世代間のCX調査から分かる、これからのカスタマーサポートについて聞いた。
──最新のグローバルCXレポートで得られた結果を教えてください。
Janelle Dieken 今回のレポートでは、世代ごとのCXに関する価値観の違いについて調査しました。Z世代(1997年~2012年生まれ)、ミレニアル世代(1981年~1996年生まれ)、X世代(1965年~1980年生まれ)、ベビーブーム世代(1946年~1964年生まれ)など、さまざまな世代を対象にグローバルで1万3000人を調査したところ、非常に興味深い結果が得られました。とくにミレニアル世代に関しては、彼らが今後、CX/CX向上を図るうえでの基準値になると考えられます。
──どのような特徴がありましたか。
Janelle Dieken ミレニアル世代は、彼らの体験に基づいた、パーソナライズされた対応を非常に重要と考えています。また、チャットから電話、メールからWhatsAppなど、チャネル間のシームレスな連携を重視しています。また、ミレニアル世代の63%が、セルフサービスが重要かつ必要な機能と認識しているのに対し、ベビーブーム世代は31%でした。さらに、企業が最新のテクノロジーを利用すること、例えばAIの活用について、ミレニアル世代の55%が重要と回答したのに対し、ベビーブーム世代は22%と低い結果となりました。今後、メインの消費者層となるミレニアル世代にアプローチするには、AI技術などを活用し、顧客ニーズを把握したうえでパーソナライズ化された対応が求められています。
──世代間の違いから、今後のカスタマーサポートの方向性が見えてきますね。
Janelle Dieken 我々がこうした調査を実施する目的は、世代ごとの行動パターンや企業に期待するサポートを理解するためです。世代ごとの考え方や文化の違いも存在します。ビジネスリーダーは、ピープルセントリック(人間中心)に物事を考えるために、人々の考え方が変化していくことを理解し、それぞれの期待値を把握する必要があります。
──Genesysとして、どのようにサポートのパーソナライズ化を実現していこうとお考えですか。
Janelle Dieken 具体的には、AIを駆使した「カスタマーエクスペリエンス・オーケストレーション」の活用です。顧客体験をエンドツーエンドで結びつけ、顧客ニーズをシームレスに理解します。例えば、「お客様が電話をかけてきた」「WhatsAppでメッセージを送ってきた」「店舗に来店した」など、すべての体験をシームレスにつなげて真の顧客ニーズを理解し、次に取り組むべきベストアクションを提示します。これをGenesys Cloudに搭載したAIによって実現できます。蓄積したデータに基づいて、次に何をすべきか、どういうアクションを取るべきかについて、インテリジェントな意思決定を図ることができます。
2024年7月に開催されたGenesys主催のイベント「Xperience Tokyo 2024」にてインタビューを実施
──先ほど、航空会社のカスタマーサポートのデモを拝見しましたが、荷物が行方不明になったという不満をユーザーがSNSに書き込んだ際、ソーシャルリスニングで確認したスタッフがすぐに連絡したのと同時に、別のスタッフが荷物を追跡して見つけ次第、宿泊中のホテルに届けたという“プロアクティブ”なサービスに感心しました。
Janelle Dieken このようなサポート体制は現時点でも実現可能です。顧客がSNSに何か不満を書き込めば、それをきっかけに自動でサポートが得られるメッセージを発信したり、あるいは社内のしかるべきスタッフに通知してサポートする。これまでの顧客からの問い合わせに対応する受動的なサポート体制だけでなく、顧客の状況を察知したプロアクティブなサポートによってCXが改善され、顧客満足度をより高められます。
──顧客対応の自動化が進む一方で、オペレータの業務はより複雑化するのではないでしょうか。
Janelle Dieken Genesys Cloudには、オペレータを支援する多くの機能が搭載されていますが、なかでもAIと連携した「Agent Copilot」はオペレータにさまざまなノウハウを提供します。オペレータは対応マニュアルのすべてを頭に入れておかなくても、Copilotが何をすべきかを指示してくれます。一般的に、着台後のOJT研修は通常4~6週間かかるのが一般的ですが、AIの支援によって、育成期間をさらに短縮できるでしょう。終話後の後処理も自動化でき、効率化も可能です。
──Genesys Cloudの活用事例を教えてください。
Janelle Dieken ウエスタンシドニー大学では、在籍する学生のCXを大幅に改善しました。従来は有人による電話対応に限定され、放棄呼率も非常に高かったのが実情です。学生からは、電話のほかにWhatsAppやチャットでサポートしてほしいという要望も挙がっていました。そこで、Genesys Cloudによって、音声対話からメッセージ、メール、SMS、WhatsAppなど、多種多様なチャネルでシームレスにやり取りできるようになりました。その結果、平均応答速度は65%改善、放棄呼も45%削減でき、顧客満足度も90%まで向上しました。
このほか、ヴァージン・アトランティック航空は、Genesys Cloudの採用により、問い合わせてくる意図を察知できるようになったことで、インタラクションが導入前と比べて220%増加、平均処理時間も50%削減でき、顧客満足度は28ポイントも向上しました。
──今後の顧客サポートの未来についてどのように展望されていますか。
Janelle Dieken 今後はAIを駆使して、顧客サポートのパーソナライズ化がより一層進むと予測しております。また、インバウンド対応にとどまらず、顧客が問題を抱える前に通知を送るなど、顧客の意図を事前に予測したサポートがさらに加速するでしょう。当社としてもAIによるCopilot機能を駆使することで、オペレータの負担を軽減し、より迅速かつ的確な対応を実現していきます。