
――現在の役割と、取り組んでいる課題を教えてください。
志賀 大きく2つあります。ひとつは、デジタルマーケティングによる集客やCRM、サイト改善です。もうひとつはAI活用で、営業の生産性向上や、開示情報などの制作業務への適用を進めていくことです。FUNDINNOは、未上場企業と投資家をつなぎ、資金調達を支援するプラットフォームを提供しています。株式投資型クラウドファンディングに加え、特定投資家向けのサービスも展開しており、営業が間に入るビジネスがあります。
そこで重要になるのが、一次接点後の商談プロセスです。広告でお客様を集めても、その後の投資につなげることが重要。営業への転換率を高められれば、集客に使える費用の幅も広がります。マーケティングだけを改善するのではなく、営業のプロセスも含めて生産性を高め、好循環をつくりたいと考えています。
――営業の生産性を高めるとは、商談を短時間で進めるということでしょうか。
志賀 時間の短縮だけではありません。むしろ営業がお客様ときちんと向き合い、質の高いコミュニケーションを取れるようにすることです。これを「商談のCRM」と呼んでいます。例えば、お客様がニーズを話しているのに営業が拾えていない、把握していても提案に活かせていない、次に何をするかが明確になっていない。こうした課題をAIで支援したいのです。
当社には、資金調達を希望する企業に向けた営業と、投資家に向けた営業があります。企業には募集案件をまとめるため、審査に関わる内容も聞かなければなりません。一方、投資家には利益だけでなく、社会的な意義やベンチャーを育てたいという思いを持つ方もいます。投資の方針や関心を理解して、案件を紹介する必要があります。そのためには、営業が対話に集中できる環境を整えることが重要です。
――具体的には、どこからAI活用に取り組むのでしょうか。
志賀 まずは入力支援です。Salesforceなどで商談を管理しようとすると、最初に課題になるのが入力の負荷です。営業の仕事はあくまで「お客様との対話」ですので、入力作業はできるだけ減らしたいと考えています。
録音した商談を文字起こしし、その中から登録すべき項目を切り出して、必須項目を自動で入力できるようにする。さらに、聞くべき情報が会話に含まれていなければ、営業に確認を促す。また、オンラインの商談だけでなく、投資家とのやり取りでは電話もあります。相手に録音することを伝え、対話の情報をどう残すかも考えなければなりません。Webサイトで行動ログを取るのと同じように、お客様との会話からニーズを捉えるための情報を蓄積していきたいと考えています。
――すでに実践しているデータ活用はありますか。
志賀 Salesforceに蓄積された投資実行のデータを、Claudeを使って分析しています。例えば、取り引きの直近性、頻度、金額を見るRFM分析を行い、営業がアプローチする際の優先順位を考える、といった活用です。
一方、データの取り扱いには注意が必要です。分析結果を出力したExcelやWordに個人情報が入るとリスクが高まります。そのため、出力では氏名などを使わず、SalesforceのIDで扱うようにするといった制約を設けています。こうした分析は、誰にでも開放するのではなく、データの扱いを理解している人が行うことが大切です。また、AIの出力が正しいかを確認する必要もあります。とくに重要な意思決定に使う場合、分析結果をそのまま受け入れるのは危険です。外部システムとの連携では、情報の取得だけでなく更新までできる場合があります。人の承認を挟むなど、操作の範囲と確認の手順を決めなければなりません。AIの性能以上に、データガバナンスが重要になると感じています。