コラム
第174回
私は出張する際に、よくビジネスホテルを利用します。どこのホテルも自動化が進展し、チェックインもチェックアウトもまったく人を介することなく完了するスタイルが定着しています。働き方改革の影響か、多くのホテルで夜になるとフロントに人がおらず、呼び出しボタンを押すなどすると、バックオフィスからスタッフが出てきて対応してくれます。観光地のホテルでは、フロントとは別にコンシェルジュデスクが置かれていたりします。有人サポートであるコンシェルジュの対応品質の差が、ホテルの顧客満足度に大きく影響するので、質の高いホテルほど優秀なコンシェルジュが多くいます。私自身が困っているときに、コンシェルジュが親身になって調べ、細やかに対応してくれると、「次回もこのホテルに宿泊したい」と感じます。
今年の夏は、家族で伊勢・鳥羽・志摩を巡りました。宿泊先はホテルではなく、老舗の旅館にしました。レンタカーで旅館の前に着くと、仲居さんと番頭さんが猛暑の中、外で待っており、出迎えてくれたのには驚きました。恐らく、旅館の敷地に入るのを感知するセンサーなどがあり、顧客の車が旅館の前に着くよりも早く、出迎える仕組みがあるのでしょう。部屋で夕食を食べていると、女将さんが部屋まであいさつにきてくれました。当該旅館を選択したことに対して、ていねいな感謝の言葉が有りました。さらに、部屋や温泉施設の満足度や、困った点がないかなどを確認してくれました。私たちが翌日向かう伊勢神宮の参拝や、志摩の海女小屋の食事で知りたいことがないかなども含めて聞いてくれて、適切なアドバイスをしてくれました。チェックアウトの際には、旅館の前に女将さんと部屋を担当していた仲居さんが外で待っており、家族写真を撮ってくれた後、礼儀正しいお見送りをしてくれました。日本の旅館に宿泊すると、ホテルとは違った能動的なサービスを体験することができ、感動します。一般的なホテルが、顧客のアクションをきっかけにサービスが始まるのに対して、日本の老舗旅館では、女将さんや仲居さんが宿泊客の真のニーズを聞き出して、先回りでプラスアルファのサービスを提供しようとする点に違いを感じます。当該旅館は数年前に大規模なリニューアルがされ、予約方法を始めさまざまな点が合理化されています。しかし、旅館に着いてからの顧客との接点は、必ず人が行っています。顧客サポートは人が行ったほうが、満足度が高くなるという、長年のおもてなしの経験から導き出された結論なのでしょう。
近年、顧客と直接やりとりをするAIを使ったチャットボットやボイスボットを採用する企業が増えています。人件費コストの削減を急ぐあまり、未成熟な段階で導入し、顧客満足度が低下しているケースも散見されます。夏の旅行を通じて、DXやAIは顧客サポートの担当者を支援する仕組みに徹したほうが、顧客満足度の維持・向上につながるのではないかと感じました。