三井ダイレクト損害保険

今月のPOINTS!
■システム概要
カラクリが提供する音声対話型AI『KARAKURI voice agent』。IVRで「マイページへのログイン方法」を選ぶと、顧客の発話や操作状況を確認し、必要な設定や手順を段階的に案内する。既存チャットボットのナレッジを参照し、営業時間内は有人対応へ切り替えながら、ログイン操作を24時間365日支援する。
■選び方のポイント
選定では、①RAGによるハルシネーションの抑制、②Speech to Speech方式による自然な音声、③曖昧な発話から意図を捉える聞き返しの精度、④会話をリアルタイムで確認し、ログをVOC分析に生かせる機能を重視した。既存ナレッジを活用でき、導入後も対話内容を継続的に磨ける点が決め手となった。
■使い方のポイント
会話ログを基に、離脱や有人対応へ切り替わった理由を週次で検証。顧客がどこで迷ったのか、どの聞き返しが有効だったのかを確認し、会話カードやプロンプトを修正する。回答範囲を広げすぎず、ログイン支援に絞って対話精度を継続的に磨いている。
三井ダイレクト損害保険のお客さまセンターは、東京・飯田橋と愛媛・松山の2拠点で運営する。保険料の見積もりや契約後の各種手続きなどを担い、顧客接点は電話のほか、チャットボット、有人チャット、メール、SMS、シナリオ型とAI型の音声自動応答、アバター相談の計8チャネルに及ぶ。
有人対応の中核を担うのが、「コンシェルジュ」である。高い応対品質と商品知識を備え、補償内容の相談やWeb操作の支援など、専門性を要する問い合わせに対応する。
一方、定型的な問い合わせは顧客自身で解決できるチャネルへ誘導するなど、問い合わせの内容に応じて各チャネルを使い分けている。今回導入したボイスエージェント(同社での自立型AIボイスボットの呼称)も、こうしたチャネル設計の一角を担う。
ボイスエージェント導入の背景には、電話対応の負荷軽減とデジタルシフトの推進がある。同社には電話とノンボイスを合わせて月8万〜9万件の問い合わせが寄せられ、とくに課題となったのが、マイページへのログインに関する入電だった。2026年9月に二段階認証を導入する予定で、さらなる増加が見込まれる。2024年7月のWebサイト刷新時にも、ログイン関連の入電は通常の2〜3倍に増えており、事前の受け皿づくりが急務だった。
ログイン案内は定型化しやすい一方、顧客は高齢者が中心で、画面の表示内容や操作状況を確認しながら進める丁寧な支援が欠かせない。お客さまセンター部 品質・業務グループ サブマネージャーの佃 明泰氏は、「回答が正しくても、操作場所が分からなければ解決には至りません。どこでつまずいているのかを聞きながら、操作を一つずつ丁寧に案内する必要があります」と指摘する。
同社は、こうした案内を自然な対話で担えるボイスエージェントの導入を検討し、カラクリの『KARAKURI voice agent』を採用した。
選定で最も重視したのは、ハルシネーションの抑制だ。同社は約7年間、AIチャットボット『KARAKURI chatbot』を運用し、質問と回答をまとめたナレッジ「会話カード」を蓄積・改善してきた。『KARAKURI voice agent』は、この会話カードをRAGの参照情報としてそのまま活用でき、誤案内のリスクを構造的に抑えられる点が決め手となった。さらに、Speech to Speech方式による「滑らかで人間らしい音声対話品質の高さ」(佃氏)も、採用を後押しした。

『KARAKURI voice agent』は、顧客がIVRで「マイページへのログイン方法」を選ぶと、PBXから外線転送される仕組みだ。ログイン関連以外の質問には回答しない。営業時間内外で対応シナリオを分け、複雑な相談やAIで解決できない用件はオペレータへ引き継ぎ、営業時間外は営業時間内にかけ直すよう案内する。
一方、対応範囲内では、顧客が今どの画面を見ているかを一つずつ丁寧に確認し、ログイン完了まで段階的に案内する(図)。「単に操作方法を伝えるのではなく、顧客に寄り添いながら伴走できるエージェントにしたい」と佃氏は設計思想を説明する。

その実現を支えるのが週次の改善サイクルだ。同社では離脱理由やエスカレーション要因をログから徹底分析し、カラクリとともに会話カードやプロンプトを見直している。その結果、月約2000件をボイスエージェントが対応し、解決率は約5割、営業時間外に限ると67.7%(2026年6月実績)に達している。さらに稼働から約3カ月間、AI応対に起因する苦情も発生していない。
同社は今後、オペレータ支援やインテリジェントルーティングなど部分的な選択肢を検討しながら全体基盤の設計を策定していく方針だ。