コラム
第173回
企業のサポート部門の人と会話をすると、AIの活用推進が「サポート担当者の採用難を乗り越える施策の切り札」と考えている企業が多いことに驚きます。「AIは正しい回答をしないこともあるが、サポート担当者も誤った回答をすることがあり、AIのほうが正しく回答する率が高くなってきたので、実用レベルに達している」とか、「音声AIが顧客の言葉に反応して発する共感の言葉や感謝の言葉、謝罪の言葉には気持ちがこもっており、十分に実用に耐えうる品質だ」などの発言を、あちらこちらで聞きます。しかし、それは本当に有人のサポート担当者を代替できるものなのでしょうか。私が顧客の立場で考えたとき、AIの誤った案内や感情がこもったような共感の言葉、謝罪の言葉は受け入れがたいものであると考えています。
例えば、有人のサポート担当者が誤った案内をしたとして、そのときに気持ちを込めて謝罪をしてくれたなら、それは生身の人間の心からの言葉であると受け止めます。しかし、AIが誤って案内したときはどうでしょうか。顧客は、AIシステムの不具合であると認識します。故に、責任の所在は擬人化されたAIではなく、不完全なAIであると認識しながらも、その仕組みで顧客と直接対話することを承認した企業に向けられます。このことから、AIによる謝罪や弁明に、いくら感情がこもっていたとしても、それは表面的な言葉と感じられてしまいます。そのため、顧客の心に響くことはなく、前後の文脈から自動生成された言葉としか感じられないのではないでしょうか。