座談会 <VOCを全社資産に>
生成AIが顧客の声(VOC)の構造化や分析に、多大な影響をもたらしている。しかし、収集する部門や接点によってVOC活用の目的や特性は異なる。今回、VOCを全社資産として製品・サービス改善や価値創造につなげる道筋について、実務経験の豊富な2者と有識者が議論を深めた。
<パネリスト>(順不同)


<モデレータ>

渡部 生成AIの普及によって、VOCの構造化や分析は大きく変わろうとしています。これまで、カスタマーサポート(CS)に集まる「顧客の声」(VOC)は、定性情報であるため、扱いにくいと認識されてしまい、マーケティング部門や経営層の意思決定に活用されにくい背景があります。一方で、マーケティング部門も、アンケートや市場調査などを通じてVOCを収集しています。そこで本日は、各部門が扱うVOCの違いや、それをどうすれば全社資産として活用できるのかを考えます。まずは、各社のVOC活動の現状からうかがえますか。
平田 オービックビジネスコンサルタント(OBC)で、CSやカスタマーサクセスを統括しています。当社は、約30年にわたり製品に対する要望、VOCを開発部門に集約しています。CSやマーケティング、営業、導入支援など、顧客接点を持つ部門が、各々のVOCを共通のプラットフォームに入力しています。特徴的なのは、いわゆる“声の大きさ”を優先するのではなく、困っているかという“量”で判断している点です。定量化することで、実現させる機能を、合理的に順位づけする文化が根付いています。
ただし、課題もあります。要望はテキスト化されるため、顧客の困り具合や、どのような温度感で語ったのかまでは伝わりにくい。そこで、各部門が開発チームと定期的にミーティングを行い、顧客との対話から得た背景や熱量を補完するようにしています。
阿部 当社は、スニーカーやトレーディングカードの鑑定付きマーケットプレイス「SNKRDUNK(スニダン)」を運営しています。現状、CSとマーケティングと各部門のVOC活動は目的が異なるため、(部門は)分かれているものの、連携を深めて実践しています。例えば、マーケティングがキャンペーンを実施した後に寄せられた問い合わせ内容を、CSがフィードバックしています。CSに入るのは、自社サービスやアプリの使いにくさや、倉庫や物流に関するトラブルについての問い合わせが中心です。そこで、関連部門と連携し、既存機能の改善や問題発生率の低減にVOCを活用しています。
新規顧客を増やすために、CSがVOCを活用するまでには至ってはいません。しかし、そのための声を収集するには、問い合わせ対応とは別の方法が必要だと感じます。サービス全体の印象や、まだ利用していない層のニーズを知るには、マーケティングが行っているような、アンケートや市場調査といったアプローチが適切だと思います。
渡部 VOCは、マーケティング部門も積極的に収集しています。阿部さんの指摘のとおり、同じ「顧客の声」でも、対象や目的はかなり違いますね。