
“ラジオ界のニュースター”との呼び声も高い若松 晃さんは、福岡市の総合通信販売会社「はぴねすくらぶ」でラジオショッピングキャスターを務める。
全国各地のラジオ番組に出演し、多い日には10本以上の通販番組を担当する。これまでの出演回数は3万回を超えた。
若松さんの語り口は、落語の枕のようだ。何気ない日常の出来事や自身の趣味や体験談から話を始めたり、パーソナリティとの軽快なやり取りで場を温めて、商品の紹介へと自然につなげていく。そのため、若松さんの通販の時間を、番組のいちコーナーとして楽しむリスナーも多い。
「ラジオショッピングキャスターは、商品を売る仕事と思われるかもしれませんが、それにはまず、番組を“聞いてもらうこと”が欠かせません」
その原点は前職にある。学生時代からラジオの制作に関わり、卒業後はラジオディレクターとして番組づくりに携わってきた。
「当時から、どうしたら番組を最後まで聞いてもらえるかをずっと考えていました」
番組の進行を考え、パーソナリティが気持ちよく話せるように準備をする。どのタイミングで話題を振り、どう盛り上げればリスナーの“耳が離れない”か。その姿勢は今も変わらない。関心を持ってもらうために、「通販というより、番組の一部として楽しんでもらえる時間にしたいと思っています」。
だからこそ、出演する番組のパーソナリティとの関係性づくりを重んじ、初めて担当する番組では、必ずあいさつに出向く。「番組づくりの仲間に入れてください、という気持ちですね」。
パーソナリティの人柄や話し方の特徴を理解し、相手が話しやすい空気をつくる。ディレクター時代に培った事柄を、今は出演者として実践している。
ラジオでは、リスナーの反応を即座には感じにくい。そこで若松さんは、「見えないからこそ想像する」と話す。
「この番組を聞いているのはどんな人だろう。何歳くらいで、どんな暮らしをしていて、どんな悩みを抱えているのか。そんなことを考えながら話しています」
平日の午前中ならば、家事をしながら聞いている人が多いかもしれない。夕方は、仕事帰りの人が聞いていることもある。共演するパーソナリティにも想像をめぐらせ、「こんな話題なら乗ってくれるかな」と会話を組み立てる。こうした“相手を思い描く力”も、若松さんの強みに違いない。
実は若松さん、はぴねすくらぶでは、オペレータ業務をすることもあるそうだ。そこで改めて実感するのが、声のみで信頼を築く難しさだという。「電話口のお客様は見えません。だからこそ笑顔で話すことを大切にしています」。
若松さんは、「口角を上げて話すと、声のトーンは変わる」と断言。「私は一言めから、100%の笑顔で話すようにしています。こちらが笑顔でいると、不思議とお相手も柔らかくなる気がします」。
「安いです!お得ですよ!と言い続けても関心は持たれません。それよりも、この商品で、生活がどう変わるかを伝えたいです」
そのために、話し方、話す順番、切り口を変えるなど、日々、試行錯誤し続ける。
転機になったのが、FM局のとある番組だった。商品説明を後回しにし、まったく関係のない話題から入った。「実験してみました。こんな話をしたらどうなるのかなって」。すると予想以上の反響があり、注文数も伸びた。
こうした積み重ねとして、毎日ノートを1ページ書く習慣もある。15年は続けているそうだ。
放送で感じたことや反応、気づき、思いついた新しい表現を記録している。「なぜ伝わったのか。なぜ売れたのか。それを残し、言語化したいです」。話し方の技術だけではない。相手をいかに想像するか、どう理解してもらうか。こうした考え方を、次世代へ受け継ぎたいと言う。
リスナーの顔は見えない。それでも、相手を想像し続ける。若松さんの放送に思わず耳を傾けてしまうのは、その徹底した想像力がゆえかもしれない。
