実践編
第5回
コールセンターが深刻な採用難にあることは言うまでもありません。採用した人材を育成し、早い段階からスキルのロードマップを示し、優秀な人材の確保に尽力しているセンターは多いはずです。一方で、成長した優秀な人材に昇格を打診しても、自信のなさを理由に断られるケースも少なくありません。今回は、1on1を通じて“自信がない”を“やってみたい”に変えるキャリア相談の進め方を探ります。
オペレータに寄り添いながら効果的な1on1を繰り返し、「ここでずっと働きたい」と選んでもらえるセンターを目指していても、選んでもらって終わりではありません。
最初は、自宅から近いという通勤の利便性や、フレキシブルな勤務時間を理由に職場を選択したかもしれません。また、初めての業務で、入社時は慣れることに必死で、将来のキャリアまでは想定できなかったことでしょう。
ところが、学びながら経験を積み、スキル向上が図れてくると、「何のために働くのか」という目的も変わり、「このままでいいのか」と将来の可能性も含めた今後のキャリアについて考えるようになります。その気持ちの変化も、定例の1on1で見逃さないようにしなければなりません。では、個々の思いに寄り添いながら、モチベートし、チャレンジを促すにはどうしたらよいのでしょうか。

オペレータにとっては、管理者が「私の将来を真剣に考えてくれている」と思えるからこそ、次にチャレンジしたいと前向きに考えるようになります。そのため、必ず将来のキャリアについて相談する1on1を実施しましょう。
また、個々のポテンシャルを引き出すためにも、話をしっかり聞き、質問を加えながら理解を深めます。その際、オペレータの真意を引き出すことが大切なので、会話の比率は、管理者は2割程度に控え、オペレータには8割話してもらうことを目安にリードします。
私が行ってきた面談においても、「自信があるのでやらせてください」という方は少なく、最初は「自信がない」と回答する方がほとんどです。対話を通じてその真意を聞き出すと、やってみたい気持ちはあるものの、万一できなかったらどうしよう、失敗したらどうしよう、迷惑をかけたくないといった不安があるからでした。
人によって異なる不安を聞き出し、一緒に整理すると、現在の状況とは関係のない過去のトラウマから積極的になれなかったり、意外と「あれ、それってもしかしたら妄想?」とも思えるような、まだ起きていないことに対する不安であることに気づくことがあります。
誰にでも不安はありますが、何に対する不安なのか、そしてその不安が実際に起こり得ることなのか、話しながら一緒に整理すると、「なんだ、大したことじゃなかった」と気持ちが落ち着き、軽くなるケースをたくさん見てきました。そして、まだ残っている不安に対してどんなサポートが可能なのかを相談し、具体的なネクストアクションまで決めておきましょう。
では、実際の1on1を想定し、オペレータの回答に応じたNG例・OK例を挙げます。
管理者の質問例:
・**さんは、受電業務を本当によく頑張っており、実績も順調に向上していますね。是非長く勤務いただきたいと考えております。
・今後のキャリアについて、**さんのご希望を踏まえながら一緒に考えていきたいので、**さんの考えを聞かせてください。
オペレータ回答例:
・先のことはまったく考えていないです。私はこのままでいいです。
・チームリーダーやトレーナーは大変そうで、まったくなりたくないし、やれる自信もありません。
・私は、お客様に「ありがとう」と言ってもらうと幸せを感じるので、このまま受電対応をずっと続けたいです。
・将来的には管理者になれたらと思いますが、どうしたらよいですか。
■NG例
・**さんはチームリーダーになりたくないのですね。分かりました。
・気持ちはわかるけど、よほど頑張らないとちょっと難しいと思うよ。
注意すべきは、今は考えられなくても、将来的にやる気が出てくる、または経験を積んで十分に要件を満たせるようになる可能性があります。候補者ではないと決めつけないことが大切です。
■OK例
・**さんは、継続的にお客様満足度評価も高く、多くのお客様から感謝の言葉をいただいており、本当に素晴らしいです。そのノウハウをもっと新人の方々に教えてもらい、センター全体で同じように対応できる人を増やしたいと考えています。そのために**さんに将来的にチームリーダーやトレーナーになってもらいたいと期待しています。
・**さんはそう思っているんですね。とくにどんな点が大変そうに見えていますか?
・確かに大変ですが、伴走し、成長をともに祝福できることは、とてもやりがいがありますよ。一緒にやってみませんか?

これまでの実績を含め、なぜ対象者に昇格チャレンジしてもらいたいのか、その理由を管理者から明確に伝えましょう。後から「なんだか分からないけど推薦された」となってしまっては、せっかくの機会が逆効果になります。また、1回のキャリア相談で急に気持ちが変わるものではありません。数カ月後には“やってみる”になることを信じ、その後の定例1on1で継続フォローしていきましょう。