BPO総市場の現状と展望2026年版
<コンタクトセンター&フルフィルメントサービス編>
──デロイト トーマツ ミック経済研究所
コロナ特需を終え、2023年度に初のマイナス成長となったコンタクトセンターBPO市場。翌年度以降は回復に転じると見込まれたが、24年度の市場規模は9314億円で前年度比2.3%減となり、2カ年連続のマイナス成長で終えた。今後、民需案件では従来型の大規模業務が縮小傾向にあり、新たなビジネスモデルへの転換を迫られそうだ。
ICT/デジタル分野を主とした市場調査機関であるデロイト トーマツ ミック経済研究所は2026年3月、コンタクトセンターおよびフルフィルメントサービス市場を調査分析した「BPO総市場の現状と展望2026年版<コンタクトセンター&フルフィルメントサービス編>」(調査期間:2025年10月〜2026年2月)を発刊した。同レポートは、主要BPOベンダー36社を個別調査し、その他のベンダーを含めて23年度〜25年度までの売上実績・見込みを集計・分析。さらに28年度までの売上規模を予測している。
同レポートによれば、コンタクトセンターBPO(業務委託)の市場規模は、23年度は新型コロナウイルス対応に伴う特需が終息し始めたことを背景に9530億円(対前年比96.7%)となり、調査開始以来、初のマイナス成長。24年度は、当初予想された市場回復とは異なり、9314億円(同97.7%)と2カ年連続のマイナス成長となった。
「23年度まで残存していたコロナ関連案件の終了による公共案件の減少と、民需系における従来型コールセンター業務の縮小傾向が重なったことが主な要因です」と、調査第一部 部長 上級研究員の佐久間 尚基氏は指摘する。近年は、人材不足やコスト意識の高まりから、大規模センターが段階的に縮小される傾向にあり、これが市場全体に影響を与えているという。
25年度は、民需案件を中心に9548億円(同102.5%)と回復基調に転じる見込み。ただし、前述のように従来型のコールセンター業務は縮小傾向にあり、商談あたりの売上減少が予想される。一方で、内製でコンタクトセンターを運営してきた企業・団体における業務委託ニーズの高まりや、膨大なデータ・運営知見の蓄積を生かした生成AIの活用、また、VOCを活用したマーケティング支援など、コール業務以外への事業規模拡大が進み始めている。
このように、従来のコールセンターから次世代コンタクトセンターへ、さらにはプロフィットセンターへと進化させていくことが、今後のBPO市場拡大のカギと捉えられており、ベンダー各社も新たな取り組みを開始している。

ポイントはコンタクトセンターの高付加価値化だ。例えば、生成AIなどを活用し定型的な問い合わせは自動対応、複雑な内容や緊急性の高い案件は高スキルオペレータに接続する。これによりオペレータの高付加価値化と顧客満足度の向上を同時に実現、少人数でも高単価のビジネスを実現できる。
「現在のAIでは完全自動化は難しく、そこに高付加価値オペレータの存在意義があります。高スキル人材を育成し、例えば少人数で従来規模の仕事をカバーして売り上げを確保するという形も考えられます」と佐久間氏は話す。
生成AIを活用したプロフィットの創出も視野に入れる。具体的には、コンタクトセンターに蓄積された膨大な顧客情報や運営知見に基づいたパーソナライズ対応を実践、顧客ロイヤルティを高めることで収益貢献につなげていく。
「生成AI活用を推進するため、SI企業やテクノロジーベンダーとの協業を進めるBPOベンダーもあります」と佐久間氏は話す。
もう1つの軸として注目されるのが、VOC活用による新たな価値創造とマーケティング領域へのアプローチ強化だ。「SI企業のコンサル部門やコンサルファームなどと連携し、カスタマーサポート部門だけでなく、マーケティング部門や営業部門へ横断的なアプローチを展開し、企業の収益向上に直接貢献するビジネスモデルの構築を目指すベンダーもあります」と、佐久間氏は説明する。
新たな事業モデルでは、従来の1席いくらの人工(にんく)ビジネスは困難だ。「まだ模索中のところが多いですが、例えばシステム利用料+高スキル人材の組み合わせによる新しい料金体系を構想しているようです」(佐久間氏)。
このように市場環境は不透明な部分もあるが、次世代コンタクトセンターの稼働が増えていくことで市場は緩やかに右肩上がりで推移すると予測され、24年度以降は年平均成長率3.6%で推移し、28年度には1兆740億円規模まで市場は成長すると予測している。
なお、今後は業界再編もあり得る。「中小規模のコンタクトセンター事業者の統廃合が進む可能性があります。人材採用難、設備投資負担、AI技術導入コストを考慮すると、大手企業による買収や子会社化が進むことが考えられます」と佐久間氏。内製のセンターやグループ子会社のコールセンター会社の買収などもありそうだ。
