コラム
第169回
生成AIの登場により、仕事の内容が変わったという人は多いだろう。コンサルティングの仕事においても、リサーチ、議事メモ作成や要点整理、資料のドラフト作成などは、生成AIを活用することで大幅に生産性が向上した。結果として大量のリストラを行ったとされる外資系ファームもあるが、ある意味、健全ともいえる。人材派遣モデルのコンサル会社は、IT人材不足を背景に売上好調だとすると、現場における仕事の質的変化に気付きにくいのかも知れない。
最近、顧客企業の依頼でRFPを作成する内容の提案機会が増えている。コンタクトセンターの多くの課題に優先順位を付け、どのようなソリューションをあてるかに悩んでいるようである。一方で、RFP作成を依頼するコンサル選定も難しいとこぼす。どの会社の提案も似ているから判断に迷うそうだ。以前からコンサル会社の選択は、とても難しいとは思っているが、これまでは、似たような提案書とはならなかった。今日では、提案書作成に生成AIを駆使する会社もあるから、提案書が似ているのかも知れない。試しに私が専門としない会計領域や物流領域の課題をテーマに提案書を作ってみた。すると見事に懐に刺さるような提案書が出来上がった。まるで、その領域を知り尽くしているかのような提案書である。ここに安い価格をつけたら受注してしまいそうである。もちろん、私はそんなことはしない。しかし、コンタクトセンターに少しでも知識がある人であれば、容易にプロのような提案書が作れてしまう。
ただし、顧客企業の機密情報を生成AIに提供しているかも知れず、そのチェックは難しい。やはり、相談ごとを抱える企業が、生成AIで武装された提案書を正しく評価するのは簡単ではない。その領域に明るくない人が、提案書という書面だけで優劣を付けるのは難しいのは当然である。だから、実際に説明してもらい、その内容に関する質疑応答の機会を通じて、本質を見極める必要がある。安易に提案書の内容と価格だけで、意思決定しては絶対にいけないのである。現場での対応力や経験、実績などを判断する目を持ち、それを社内説明する責任が依頼主にある。つまり、生成AI時代の選定作業は、依頼主にとって非常に難易度の高いものとなっている。選択を誤ると、プロジェクト期間中は、機密情報ごと生成AIに頼る相手と付き合うことになる。いずれにしろ、生成AIに正しくインプットすること、つまり、状況を整理するという仕事は、その領域のプロでなければできない。何より情熱と責任をもって改革を実行することは、生成AIにはできないのである。
コンタクトセンターでは、オペレータ画面にリアルタイムにFAQを表示させる機能が注目を浴びている。オペレータを支援する機能として実に魅力的である。だからといって、知識不足のオペレータが着台できるということではない。表示された文字を読み上げるのではなく、現れた情報の中から適切な内容を選別し、顧客に寄り添って案内することが求められる。むしろ、この機能によって、オペレータに要求される仕事の難易度は上昇する。生成AI前提の時代は、プロフェッショナルが求められるのだ。