TOPPANデジタル
TOPPANデジタル(現・TOPPAN)は、食品パッケージ向け自動校正サービス「review-it! for Package」のリリースと共に、SaaSビジネスを強化しカスタマーサクセス(CS)も開始。既存顧客の利用拡大による収益化を進めている。顧客の利用状況を可視化する独自手法やVOC活用を通じ、利用拡大の機会を見極める体制を構築。新規獲得と既存顧客の成長を両輪で進めている。
TOPPANデジタルの食品パッケージ向け自動校正サービス「review-it! for Package」のCSを担当するICT開発センター(当時)は、受注後のフォローや活用支援、運用提案などに注力し、新規顧客の利用定着を図ってきた。それが現在は、既存顧客の利用拡大による収益向上へとミッションを広げている。
同サービスは、食品や日用品などのパッケージ表示の誤植防止が主な目的だ。品質保証部やマーケティング部など利用者は多岐にわたる。表示ミスが一つでもあればブランドや商品価値に大きく影響しうる業務のため、各企業で課題感を感じているものの、デジタル化に踏み込んでいる企業は少ない。
導入意思決定には信頼性や事例が重要視されることに加えて、潜在顧客へのアプローチが増えたことによって、商談やマーケティング費用の回収に時間を要するようになってきた。そこで同社は、既存顧客の活用拡大による収益化をCSの重要テーマとした。同センター グループリーダー(当時)の平野雄大氏は、「新規獲得のみを伸ばすのではなく、既存顧客の利用促進によって収益を積み上げるようになってきた」と語る。今期はNRR(売上維持率)が107%となり、新規獲得も伸長。事業規模の拡大とともに、CSの役割も変化している。

重視しているのが、顧客ごとの状況把握と優先順位付けだ。
BIツール「Amazon QuickSuite」(Amazon Web Services)を使い、フェーズを「オンボーディング」「アダプション」「エクスパンション」、ヘルススコアを「Active」「Risk」「Non-Active」に分類。さらに顧客属性をセグメントA〜Cで区切り整理している(図)。

セグメント別に、Riskが高い案件は立て直しを優先し、Activeな案件はアップセルを優先する。プロダクトが本来価値を発揮しやすい業種、将来性が高い顧客のセグメントをそれぞれ定義してアプローチを検討した。同センターの棗田昂氏は「営業が新規市場を開拓するうえで、我々も同じ濃度で追いかけると、優先度の見極めが難しい案件に工数が偏ることがある。プロダクトの戦略と整合性を取り、どこを優先的に支援し、収益化するかを明確にした」と説く。
この分類は、エクスパンションの機会を捉える基盤でもある。
同サービスはトランザクション課金型のため、「利用量の増加」「別部門に広がる」などで売上が伸びる。このような兆候を捉えるべく、利用量の推移や機能ごとの利用実績も細かく可視化。利用回数の増加だけでなく、導入当初とは別の機能を使い始めたか、利用が一時的ではなく日常業務に組み込まれているかなども確認する。
同センターの樫木彩乃氏は、「価値が伝わりきっていないのにエクスパンションをしても受け入れられない。使い方に再現性がある状態を作り、利用拡大を促したい」と語る。問い合わせ以外の対応優先度を担当の主観で決めていたが“誰に、いつ、どの順番でコミュニケーションを取るか”を判別。その結果、少人数でも全顧客に対応できる体制になった。
既存顧客の収益化を加速するべく、顧客の声(VOC)の扱い方も見直している。
従来は、顧客の要望をそのまま持ち帰って共有することが多かった。しかし、個別要望をそのまま集約するだけでは、背景にある共通課題を捉えにくい。そこで、要望を“やりたいこと”“深刻度”の2軸を中心に整理し、複数項目に分類する運用に切り替えた。
樫木氏は、「VOCは、“なぜその要望が出たのか”“本当に解決したいことは何か”が重要。運用を変えることで、根底にある目的や課題を考えられるようにしたい」と語る。これにより、社内の開発部とも“件数の多さ”ではなく、“事業や顧客価値にどうつながるか”という観点で対話がしやすくなったそうだ。また、自己解決を促すテックタッチの使い方も整理した。同サービスを、フェーズに応じて支援方法を見直し、無償トライアル期はテックタッチ、有償契約後の展開局面では人的支援を厚くする運用とした。導入検討中は関心が高いフェーズのため、ガイドを通じた成功体験を作りやすい。一方、導入後に利用を広げる局面では、相手の障壁にあわせた人的支援が効果的と判断している。
さらに、CS Opsとして、AIチャットボット「CSおかん」を内部で構築。顧客の利用状況や判定根拠、チーム方針を踏まえて、壁打ちで相談できる。平野氏は、「CSは責任感が強く、全部やらなければと思いがち。AIが取り組む内容の優先順位付けと根拠を示してくれることで、成果が出るプロセスにフォーカスしやすくなった」と評価する。今後は、AI活用による業務効率化を促進し、アップセル強化を図る。機会を見つけてアクションする“後追い”ではなく、データをもとに予兆を捉えて能動的に動き、さらなる収益化を目指す。