直近のCS関連ニュースのなかから、興味・関心を惹いたものを独自にピックアップする「CS News Watch」。今回は、「生成AIの国際調査(NRI)」について取り上げます。
野村総合研究所は3月、「NRIメディアフォーラム」を開催、「日・米・中・独4カ国調査にみるAI利用の受容性と日本におけるAI浸透の未来像」のレポートを公表した。
2025年の9月に実施した、日本・米国・中国・独国で15歳~69歳の男女個人3000人(各国)を対象とした生成AIの利用状況や利用用途、生成AIに対する考え方等を尋ねる「AI利用に関する国際比較調査」に基づくレポートで、概要は下図の通り。

生成AIを「月に数回使う」割合は、日本が34.9%に対し、米国は58.8%、独国は57.9%、中国に至っては実に86.3%に達している。「ほぼ毎日使う」は日本の8.6%に対し、他の3カ国は18〜22%とかなりの差がある。調査時期がGoogle、Yahoo!がAI検索を正式リリースする直前だったため、いま調査すると大きく変わっている可能性はあるが、「AIの民主化」の展開速度はかなり遅いと言わざるを得ない。
また、「自身でお金を払って生成AIサービスを利用している割合」は、中国が66%、米国が40%、独国約34%に対し、日本は約15%にとどまっている。
興味深い結果が示されたのが、「AIに対する信頼度」だ。10点満点で信頼度を聞いた結果は下図の通りで、6点以上の比率は日本が39.2%に対し、中国は91.7%。信頼度と利用度が完全に比例している。

メディアフォーラムでNRIは「日本はAIに限らず、新しいサービスが登場した後、利用が遅れる傾向は強い」と説明。慎重な“様子見”が多いのは国民性といえそうだ。
産業分野ごとのAI化に対する受容性は、国ごとの価値観の差異を如実に物語っている。
日本は、「行政手続きの負荷軽減」や「製造品質の向上」など、利便性向上には約7割が肯定的。しかし、「パーソナルAIとの対話」や「AIアバターによる接客・買い物」に対しては、「好ましくない」とする層が過半数を超える。「情緒的な領域へのAI侵食」に対する心理的障壁が高い。
一方、中国は全項目において極めて高い受容性を示しており、AIによる最適化を是とする共通認識が見て取れる。
米独は、産業のAI化に対し賛否が割れている。独国において特筆すべきは、「個人データの収集および企業間・部門間での共有」に対する強い抵抗感。中国がデータの統合による「全体最適」を歓迎しているのに対し、独国は品質向上のためであってもデータ共有への警戒を解かない傾向が強い。
中国以外の3カ国は、「あまりにもパーソナライズ化された社会」への畏怖感が強そうだ。自分の情報漏洩に対する恐れが強いと言い換えることもできる。
同調査ではかなり詳細なクラスタ分析結果も公開されているが、全体的に日本の消費者のAIに対する受容度・利用度は他の3カ国より低い。とくに「AIに対する信頼度」は米・独より高いが、利用まではしない、いわゆる「待機組」が多数を占めている点が最大の特徴だ。

細かく見ると「仕事や勉強」での利用は限定的だが、「趣味・娯楽」でのAI利用率は他国と比較しても低くはない。実務的なツールとしては、ハルシネーションの発生リスクなどが喧伝されているためやや懐疑的だが、エンターテインメント領域に対しては心理的ハードルが下がると言ってよさそうだ。サービスを提供する企業にとっては、こ点と前記した利便性向上の2つのポイントがAI活用のトリガーとなる可能性が高い。
情緒的なコミュニケーションの価値は人間に求め、「(エンタメコンテンツなどを)楽しむための利便性」はAIによる自動化を歓迎するーー行き過ぎたパーソナライズ対応に対する警戒心に留意しつつ、エフォートレス体験をAIで積極的に提供するというバランス感覚が企業に求められると言えそうだ。