※コールセンター実態調査:
コールセンタージャパン編集部が毎年、実施しているアンケート調査。定期購読企業を中心に約300問におよぶアンケートを実施。対象は事業会社のコールセンターマネジメント層で、原則としてBPOベンダーは除外(業務委託側は対象)。センターの規模、運営モデル、マネジメント課題、IT導入傾向、対応チャネル、VOC活動、カスハラ対策、AI活用状況などを聞いている。「コールセンター白書2025」の購入はこちら。Kindle版はこちら。
生成AIは、コールセンターでは主に「顧客対応結果の要約」で活用されていることは周知の事実だ。
対応後の後処理時間を削減できるという成果は、極めて可視化しやすい。仮に現在、100名のオペレータで月間10万件のコールにATT(平均通話時間)が6分、ACWの平均5分で対応している極めて多忙なセンターがあったとすれば、あくまで机上の計算ではあるが、以下のような成果が期待できる。
●現状のAHT = ATT(平均通話時間)6分+ACW(後処理時間)5分 = 11分
月間の総労働時間=10万件×11分 =110万分
1名あたりの月間能力=110万分÷100名=1万1000分(1日7.5時間で26日間の労働力が必要)
●ACW短縮後の総労働時間の算出
ACWが半分(5分→2.5分)になった場合の新しいAHTと総労働時間
短縮後のAHT=ATT6分+ACW2.5分=8.5分
短縮後の月間総労働時間=10万件×8.5分=85万分
●必要人数の算出と削減可能人数の計算
現状と同じ1名あたり1万1000分の処理能力を維持すると仮定して、必要な人数を求める。
必要オペレータ数 = 85万分÷1万1000分≒77.3名
●削減可能人数=100名-77.3名=22.7名。
実に23%もの削減効果が期待できる。
あるいは、人員を減らすのではなく、同じ100名体制で1人あたりの労働時間(顧客対応時間)に換算すると、1日約2〜2.5時間の削減が可能となる。もちろん、入電の波や欠勤率などを考慮に入れるとここまで単純な計算は成り立たないが、目安として考えてもかなり大きい。
こうして創出した時間をどう使うか。オペレータの精神的な疲労を抜く、あるいは新たなスキルを身に付ける研修にあてるなど、さまざまな取り組みが考えられそうだ。
もうひとつ、期待されているのが「VOCの品質」だ。VOCのベースとなるデータは、オペレータが手入力していたがゆえに、その要約スキルやタイピングスキルに大きく依存している。繁忙期などは、ほぼ記録できないセンターも多い。
生成AIを活用することで、この課題はほぼ解消できる。オペレータは入力の手間が省け、マネジメントはVOCを分析するベースとなるデータが確実に入手できる。まさに一石二鳥の取り組みといえる。
しかし、ここにひとつ落とし穴が潜んでいる。VOCの要約に先駆的に取り組んだ運営企業には、「用件の分類は自動化できても、応対内容を要約してしまうと肝心の“声”を捉え損なう」というところが少なくない。言い換えれば、“真のニーズ”が要約されたことで分析対象にならない、ということだ。
そうした企業では、「分類のためのプロンプト」と「分析対象としてのプロンプト」を分けてDB化するといった取り組みを進めている。あるいは、CRMデータベースへの登録は要約、VOC分析は音声認識した生データを活用してテキストマイニングするといった使い分けでカバーしているところが多い。
音声認識でテキスト化したデータをどう使うか。用途によってプロンプトを使い分けるなど、生成AIに対するリテラシーの高さが求められるが、そうした人材を情報システム部門ではなく、現場のリーダーが担う事例も増えている。コンタクトリーズンを把握しているSVやリーダーに生成AI活用のスキルを身に付けさせる動きが加速することに期待したい。(矢島)