コラム
第167回
航空券を予約後、便を変更する恐れがあるときは、株主優待割引を使う人もいると思います。
株主優待券には「優待番号(13桁数字)」と、マスキングをスクラッチする「パスワード(16桁英数字)」が記載されています。利用するには、これらの長い桁数の数字や英文字の組合せが必要になるため、私は入力間違えなどで苦労していました。家族で往復するときは、8枚もの優待券をスクラッチしなければなりません。そこで、子どもに作業を頼んだところ、強く削りすぎて文字が読めなくなり、サポートセンターに問い合わせたこともあります。ある時、優待券の券面に、四角いスクラッチエリアがあることに気が付きました。スクラッチしてみると、QRコードが出てきました。さらに、“スマートフォンのアプリやWebサイトで利用できる”と書いてあります。試しに、スマートフォンで読み込んでみると、これまで数十分もかけて家族全員分を登録していた作業が、あっという間に終わりました。気になって、いつからこのサービスが開始されたのかを調べたところ、私が調べた限り、およそ十年前から始まっていました。「株主優待情報の登録は面倒でも1つひとつ登録するもの」との固定観念があると、長期にわたって気づかないものです。
最近、証券会社のWebサイトも、ハッキングなどの影響から各社が工夫を凝らしながらセキュリティ対策を行っています。その結果として、各社別々の認証方法になっています。しかし、複数の証券会社を利用して資産運用をしているユーザーにしてみると、認証方法がそれぞれ異なることにストレスを感じます。会社によっては、指示通りに何度やってもログインできず、当日の取り引きを諦めることにもつながりかねません。ですが、近ごろは認証の仕組みが統一されつつあります。その仕組みを使うと、どの証券会社であっても驚くほど簡単にログインできます。従来型のパスワードとSMS、メールなどを使った2段階認証も併用できたりしますが、顧客が感じるストレスはまったく異なるため、従来の方式には戻れません。面倒だと思って従来の方法を使い続けた場合、前述の航空会社の株主優待券と同様に、ストレスを感じながら使い続けることになります。
顧客は慣れた方法を変えることに躊躇しがちです。よほどの理由がなければ、新たな方法をリリースしても、ストレスを抱えたまま従来の方法を使い続けます。そして、うまく使えなくなったときにサポートセンターに支援を求めるのです。せっかく便利な方法があるにもかかわらず使わないことは、顧客と企業の双方にとって不幸です。新しい仕組みを使えば顧客のストレスは解消され、顧客満足度が向上します。さらに、サポートセンターの負荷軽減にもつながるでしょう。顧客が使わないのは、利用を促進しきれていないからと捉え、従来の方式を継続している顧客を特定したうえで、「新しい方法を使えばもっと簡単に手続きができる」旨を伝える必要があります。