実践編
第1回新連載
長時間対応、暴言などカスタマーハラスメント(以下カスハラ)が社会問題となっている。2023年秋には、労災認定の評価基準としてカスハラが追加となった。また厚生労働省は事業者にカスハラ対策を義務づける法改正の検討に入った。経営者やマネジメント層が、現場を守り、優良顧客を守るために、カスハラとは何か、何を準備しどのように対応すべきかを考える。
カスタマーハラスメント(以下カスハラ)対策を考える上では、次の3点を前提とすることが重要だ。
(1)消費者には「消費者の権利」があり、事業者には「責務」が定められている。(2)多くは善良な消費者であり、事業者にはその声を商品・サービスの改善、開発、さらには経営に生かすことが求められている。(3)事業者としては、初期対応が極めて重要であり、安易にカスハラと決めつけないことが大事。
一方、不当要求や行き過ぎた行為が行われ、従業員の働く環境が害される恐れがある場合、組織としての対応が必要となる。原則として、顧客と従業員とは「対等の関係」にある。企業(経営)には、顧客の尊厳を尊重するとともに、従業員の尊厳を守ることが求められている。
顧客対応は1人で行うことがあっても、対応が難しい場合は組織で対応すべきだ。従業員を決して1人にしてはいけない。そのためにも対応方針を具体的に掲げ、さまざまなケースを想定した体制づくりが重要となる。カスハラ対策の取り組み方を正しく知って、働きやすい環境をつくるにはどうしたらよいか考察する。