コラム
第117回
約30年前にCRM(Customer Relationship Management)というワードが登場し、米国の最新の考え方やソリューション製品に大いに刺激を受け、ワクワクしながら自分なりのCRMの定義をした、わたちゃんです。バズワードとして消えないでよくぞ生き残ってくれました。
CRMは、お客様との関係を管理し、強化するための重要な手法です。従来のCRMは、主に(1)顧客プロファイル情報、(2)顧客取引(購買)情報、(3)顧客行動情報の3つのカテゴリに顧客情報を分類し、これを活用して顧客とのコミュニケーション戦略を策定、継続的な購買を促すことが主な目的でした。
(1)顧客プロファイル情報とは、住所、勤務地、性別、年齢、年収、職業などの基本属性に基づく情報です。さらに、ジオグラフィック情報、デモグラフィック情報、サイコグラフィック情報に細分化され、マーケティングの基礎データとして利用されます。
(2)顧客取引(購買)情報は、いつ、どこで、何を購入したかといった取引履歴であり、これによりお客様の購買傾向や嗜好を把握することができます。
(3)顧客行動情報は、どの店舗に入店したか、試着をしたか、キャンペーンに参加したか、ECサイトやSNSのどのコンテンツにアクセスしたかなどの行動履歴を含みます。
しかし、この3つの情報だけでは「購買者づくり」にはつながるものの、「ファンづくり」には不十分です。ファンづくりにはこれらの情報に加えて、(4)顧客体験情報と(5)顧客心理情報が重要となります。
(4)顧客体験情報とは、顧客行動情報と異なり、お客様が企業との接点でどのような体験をしたかという情報です。例えば、「試着した」という事実は顧客行動情報で、「試着室が狭くて嫌だった」「最適なコーディネート提案があって嬉しかった」といった具体的なネガティブ・ポジティブ体験が顧客体験情報に該当します。
(5)顧客心理情報は、ブランドや商品に対するお客様の愛着度合いの情報です。
現実問題として、(4)顧客体験情報や(5)顧客心理情報はデジタル化して定量化することが難しいため、多くの企業が購買者づくりのための情報に偏ってしまいがちです。また、CRMシステム自体も企業視点で構築されていることが多く、ファンづくりのための情報を十分に格納できない場合が少なくありません。
購買者づくりのための顧客誘導型施策だけではファンづくりは不可能です。顧客体験情報や、顧客心理情報に基づいた顧客体験向上型施策を同時に推進していくことが重要です。
ということで、この先30年、CRMというワードと自分のどっちが生き残るんだろう? というお年頃になってしまいましたが、お互いまだまだ進化していきたいものです。無理かなあ。