実践編
第24回
安心を届けるEコマースを目指して
久原本家Webサイトに学ぶ“改善策”
一般的な傾向として店頭と通販での「購買体験」の差が減少しており、高額商品や贈答品などでも通販の利用が増えている。総合食品メーカーの久原本家は「茅乃舎だし」を販売している。同社Webサイトでは、「おいしい」「信頼できる」というEコマースではとくに表現しづらい情緒の表現をうまく活用。これらをシニアフレンドリーの面から検証、さらなる向上を目指して考察を整理する。
久原本家は、1893年に創業した醤油蔵を原点とし、高級だしブランドとして名高い「茅乃舎だし」を取り扱う。シニア層への贈答品などにも「センスが良い」と喜ばれる商品で、日常品としても人気がある。「高品質」や「安心感」はシニアにとって重要な要素だが、Eコマース上で表現するのが難しい項目でもある。久原本家Webサイトでは、「高品質」「安心感」を配慮して表現していることが見て取れた。3つの観点から解説するとともに、60歳以上のシニアスタッフによる診断を通して、さらに向上するポイントを提示する。
1.写真のこだわり
久原本家Webサイトを開くと多くの写真が表示されている。この写真がなんとも美味しそうなのだ。写真を掲載しているサイトは多いが、比較して「美味しそう」をうまく表現している。これらの写真は2つの視点から撮影されているようだ。
◯食べる人の視点
「美味しそう」にダイレクトにつながる視点での写真が多く見られた。中でも目にした瞬間に食欲や購買意欲を刺激する「シズル感」を演出する「箸上げ」写真も多く見られた。箸上げは、料理を魅力的に見せることができ、食べる直前の映像を想起させることができる。さらに、「温度」表現にもこだわりを感じた。温かい料理は湯気が見られ、冷たい料理はガラス皿などで工夫している。写真からは伝わりにくい「温度」をしっかり伝えることで、見ている人に美味しそうを感じられるようにしている。
◯料理をする人の視点
盛り付け・取り分けをしているシーンや、蓋を開けた瞬間の湯気が上がるシーンなどを表現している。配膳をしているシーンなども見られた。これらは、「料理をする人」の視点であり、ある種の特別感(料理をする人の特権)を演出しているように感じられた。同時に料理をする人の「美味しく食べてもらいたい」という想いや優しさも見えてくるようだ。家族に安心・安全なものを食べてほしいということは、料理をする人に共通する想いだろう。「食」は家庭の中心であり、接続子として機能している形を表現しているように感じた。
以上、食品販売では情緒表現が非常に重要であることがわかる。