座談会 <ウェルビーイング経営の要点>
人手不足時代のHRM「基盤」
“幸せをもたらす就業環境と経営”の要諦
「身体的、精神的の両面で持続的な幸せ」な状況を目指す取り組みが「ウェルビーイング」だ。しかし内容を深く理解した取り組み事例はまだ少数。そこで、センター運営経験豊富な有識者と積極的に取り組む2社を招聘し、重要課題やマネジメントのポイントについて議論してもらった。
<出席者>
<モデレータ>
寺下 私はヤフーに在職中、コロナ直前の2019年頃にウェルビーイングに着手したことがあるのですが、当時は「それ(ウェルビーイング)って何?」という状況でした。現在もその段階にある企業は多いかと思います。まずは、ウェルビーイングとその傾向について、表彰制度も実施しているプロシードの清松さんに伺います。
清松 プロシードは主に、顧客体験の向上を支援するコンサルティングを提供し、ウェルビーイング実現のためのマネジメントもその対象です。21年から毎年、日本で最も幸福度の高いセンターを表彰する「Well-being CUSTOMER CENTER AWARD」を主催しています。
コンタクトセンターは、顧客のニーズの変化にマネジメント手法も対応しないといけません。最近では、デジタルシフトを受けてセルフサポートの範囲が拡大する一方、有人で受ける問い合わせ内容は高度化しています。人材不足でもあり、オペレータのモチベーションコントロールはより重要です。“センター(組織)とスタッフがそれぞれ良い状態”であると定義しているウェルビーイングへの取り組みは必要だと考えています。
寺下 具体的に、「どの様な状態がウェルビーイングができている」と定義づけるべきなのでしょうか。萬年さんと羽生さんにもお聞きします。
清松 「仕事を通じて、人生を豊かに」と定義づけ、具体的には企業と従業員、あるいは従業者間の双方向コミュニケーションが欠かせないと提唱しています。
例えば、会社の研修を受講して満足するだけで終わらず、学んだことを同僚と共有する。もしくは学んだ内容を業務へ活かし、会社に貢献している実感を持つなどの循環作用です。
萬年 ベルトラは、海外オプショナルツアーを予約できる現地ツアー専門サイト「VELTRA」を運営しています。CS部門のみならず、会社全体でウェルビーイングを推進し、「個人や企業が社会環境に適応しながら、お互いに助け合ってワークライフバランスを充実させること」に重点を置いています。
SDGsの目標のひとつにもある「働きがいも経済成長も」に近い考え方と言えます。現段階では明確な数値指標などは示さず、個人がそれぞれの働き方を考える余地を残した、包括的な取り組みを意識しています。
羽生 BPOビジネスを展開するビーウィズでは、経営の基本方針のひとつに“社員のゆとりと豊かさの追求”を掲げています。社員の個性を尊重し、物心両面の豊かさを追求することによって会社も成長していく。仕事のやりがい、立場や報酬といった待遇はもちろんなのですが、個々が集まった会社の雰囲気の調和が取れている、いわゆる“情緒”が安定している状態を目指していきたいと考えています。