2021年9月号 <ボイストレーニング・ワンポイントレッスン>

Voice Training Onepoint Lesson

<著者プロフィール>
ビジネスボイストレーニングスクール「ビジヴォ」代表。「声」「話し方」に問題を抱えるビジネスパーソンを4万人指導。250社の企業研修を行う。音楽家ならではの聴力と技術を駆使した、「超絶対音感」によるボイストレーニングが話題を呼び、TVなど多数出演。著書に、『年収の9割は声で決まる! 「できる人」だけが知っている声の出し方』『話し方トレーニング』『「話し方」に自信がもてる 1分間声トレ』

「ペーシング」「あいづち」で作る共感関係

秋竹朋子

 お客様に説明する。商品を購入してもらう。企画に賛同してもらう。能力を信頼してもらう。

 あらゆるビジネスシーンで、「共感」はカギを握ります。共感を得ることができれば、目的達成に近づいたと同じ、ということも少なくありません。

 相手の共感を得るための話し方として、「ペーシング」と「あいづち」があります。

 ペーシングは、カウンセラーやセラピストも活用している実践的テクニックで、話し方を相手のペースに合わせることです。上級者は、話す速度だけではなく、声の音程や大小、呼吸のリズムも合わせられます。ペーシングで得られる一番の効果は、声や呼吸をシンクロさせることで一体感を生み出し、互いに「共感」しやすい関係を作ることです。

 共感を抱いてもらうため、相手にシンクロさせるポイントは、「速度」「トーン」「呼吸」の3つです。話すスピードを合わせ、声の高さやボリュームも、相手の状態を見て調節する。向こうが大きく息を吸ったときはこちらも吸い、深いため息をついたらこちらも息を吐く。そうしているうちに、呼吸のリズムも合ってきます。

 注意すべきなのが、「共感してもらいたい!」と思うあまり、自分の都合に頭がいきすぎないことです。やや逆説的になりますが、相手に共感してもらうためには、まずこちらが「共感している」と示し、しっかりと伝えることが大切です。こちらが好意や共感を示せば、自然と相手も同様の感覚を抱いてくれます。このポジティブな連鎖を導くのが、ペーシングだと考えるといいでしょう。

 次に、「効果的なあいづち」について説明します。いいコミュニケーションを生むためには、話しかけることと同じ、あるいはそれ以上に「聞くこと」が重要です。もちろん、ただじっと、耳を澄まして聞いていればいいわけではありません。相手が投げたボールをしっかり受け取っていることを伝え返すには、「あいづち」が大切です。そして、このあいづちも、相手の好感を生むテクニックがちゃんとあります。

 まず、同じ言葉を繰り返さないことです。「はい」「なるほど」「確かに」などは、いずれも肯定的な意味合いを持つあいづちですが、どれかひとつを繰り返していると、逆に「適当に流している」という否定的な印象を与えかねません。バリエーションはできるだけ多く、人があまり使わないフレーズを持っていると、なおいいですね。

 また、「そうなんですか」というあいづちには要注意です。抑揚や表情の動きが付随すると、相手の話に感心している印象になりますが、無表情で平坦に返すと「興味がない」「話は一応聞いたけれど、共感はしない」という意思表示に受け取られることもあります。「はぁ」「へぇ」「ほぉ」「ふぅむ」などの「感嘆詞」もよく用いられます。実はこの感嘆詞、「ハ行」ではなく「ア行」で発声すると、より強く「興味を持って聞いています」「あなたの話に感心しています」という意思を伝えることができます。例えば、「はぁ→あぁ」「へぇ→えぇ」「ほぉ→おぉ」「ふぅむ→うぅむ」。聞き上手な方なら、意識せずに行っていることですが、些細なことだけに、できていない人が意外と多いものです。

2024年01月31日 18時11分 公開

2021年08月20日 00時00分 更新

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