ジェネシスクラウドサービス(東京都港区、ポール・伊藤・リッチー代表取締役社長)は、年次イベント『Xperience Tokyo 2026』を開催した。会場とオンラインのハイブリッド形式で開催し、17社のパートナー企業が協賛。基調講演、ユーザー企業による事例講演、経営者パネルディスカッション、ソリューション紹介を通して、AIエージェント時代のCX戦略を提示した。
冒頭は、ポール・伊藤・リッチー代表取締役社長が、日本市場におけるCXの現状とAI活用の方向性を説明した。同社のグローバル調査レポート「カスタマーエクスペリエンスの現状レポート(State of Customer Experience)」に触れ、日本市場では対応の迅速さに加え、顧客1人ひとりへの理解が重視されていると指摘。リッチー氏は、「自分のことを理解したうえで対応してくれる『Know me』『Understanding』が、ますます重要になっていると考えています」と述べた。
AI活用の方向性については、技術の検証フェーズから、具体的な業務への適用や顧客体験全体の改善を目指すフェーズに移行しつつあると説明。その実例として、国内ではイオンフィナンシャルサービスが、カード業務における情報提供に同社のAIエージェント『Agentic Virtual Agents(AVA)』を活用して本番運用を開始したことを発表した。また、AI活用を支えるクラウド基盤の安全性・信頼性にも言及。8月末に『Genesys Cloud』が政府情報システムのためのセキュリティ評価制度「ISMAP」に登録されたことも紹介した。
続いて、米Genesys Cloud ServicesのSenior Vice President CCaas PlatformであるAlex Ball氏が登壇。エージェンティックAI時代のCX実現には、AI機能の個別導入だけでは不十分で、AI、人、システム、顧客データを連携させるオーケストレーションが重要になると強調。AIと人が役割を分担し、顧客体験全体の最適化を図る「エージェンティック・オペレーティング・モデル」への転換を提唱した。
このモデルを実現するべく、クラウド型コンタクトセンター基盤『Genesys Cloud』を、エージェンティック・オーケストレーション・プラットフォームと位置づけ、さらなる機能拡充を図る方針を示した。さらに、オーケストレーション基盤としての機能を強化する技術として、複数システムを横断してタスクを実行するAVA、顧客属性や行動履歴などを統合し、顧客の状況に応じた対応を支援する『『Genesys Cloud Contextual Intelligence』、問い合わせの意図を理解して対応先を判断する『Genesys Cloud Navigator』などを紹介した。
ジェネシスクラウドサービス ソリューションコンサルティング本部長 岡野泰士氏によるデモンストレーションでは、海外出張中のスマートフォン紛失時の問い合わせを想定し、AIによる本人確認や回線停止から、有人オペレータへの引き継ぎまでの流れを披露した。また、AVAの開発・検証を効率化する仕組みとして『AVA Harness』も紹介された。
パネルディスカッションは「AIエージェント時代のCX経営」をテーマに、ケルヒャー ジャパンの柴田 佳代子代表取締役副社長 COO、JCOMの松元堅一上席執行役員、チューリッヒ保険会社の木場武政Chief Operations Officerが登壇。AIと人の役割分担や、CX向上に向けた組織・業務の変革について議論した。
柴田氏は、顧客維持や顧客生涯価値(LTV)の向上には、部門を横断した取り組みが必要だと説明。製品や部品に関する迅速かつ正確な情報提供にはAIが適する一方、顧客の潜在的なニーズを引き出すコンサルティングなど、人が価値を発揮する領域もあると指摘した。松元氏は、顧客接点の評価指標としてトランザクショナルNPSなどのアンケート活用を強化していることを紹介。AIによる回答内容の分類や課題の抽出、滞留箇所の特定などを効率化し、指標の改善につなげていると説明した。木場氏は、AI時代においてもオムニチャネル・パーソナライズ・ワンストップと言った不変的なCXを追求する必要があり、AIはそれをより高度に実現するために活用すべきと提言。また、人が対応することの価値として「共感」を取り上げ、特に事故受付などの顧客の不安が大きい場面では、人による対応が引き続き重要になると説明した。
このほか、あいおいニッセイ同和損害保険と三井情報によるGenesys Cloud導入とAI活用の検証事例、ジェネシスとセールスフォース・ジャパンによる『CX Cloud』の連携デモ、ジェネシスとServiceNowの部門横断ワークフローを組み合わせた、AIエージェントによる『解決』までの顧客体験の紹介、日本大学の大澤正彦准教授による「人とAIの協働」をテーマとした特別講演などが行われた。