Generative AI Japan(宮田裕章代表理事)は7月、都内で「GenAI Connect 2026」を開催した。
毎年会員企業向けに開催していた「会員企業サミット」をリニューアル。今回は「日進月歩で高性能なAIが登場する中、日本社会全体の価値創出モデルの再設計と構造転換のために産官学がいかに連携・挑戦していくか」をテーマに多彩なゲストが登壇、講演とパネルディスカッションを展開した。
日本成長戦略担当大臣/スタートアップ担当大臣の衆議院議員、城内 実氏は、7月21日に政府が打ち出した「日本成長戦略」について言及。「17の戦略分野の筆頭に位置するのがAI。全産業の基盤となる重要なアクセラレーターとしての役割を担う」と強調。「重要なのは、LLM(大規模言語モデル)における競争ではなく、日本の強みを活かしたフィジカルAIやバーティカルAIで優越性・不可欠性を獲得すること。世界的に高いシェアを持つ産業用ロボット分野などの強みを活かし、フィジカルAI開発のベースとなる国産マルチモーダル基盤を構築したい」と説明した。
続く最初のパネルディスカッションでは、「AI時代の構造転換をリードして、未来を切り拓く」と題して、自民党デジタル社会推進本部長・初代デジタル大臣の衆議院議員、平井卓也氏、元内閣官房/内閣府 科学技術・イノベーション推進参事官、経済産業省製造産業局金属課長の津脇慈子氏、Generative AI Japan代表理事で應義塾大学医学部 教授の宮田裕章氏が登壇した。
まず、宮田氏がパネルディスカッションの核となる「3つの問い」ーー「AIを使うときに、誰が目的を定め、責任を引き受けるのか」「「AIを断る権利から、断った後も生きられる道へ」「AIで生まれた時間の価値をどう活用していくのか」を投げかけた。
平井氏は、議論全般において「ヒューマン・イン・ザ・リード」の重要性を強調。これは、人間がAIエージェントの成果物をチェックする「ヒューマン・イン・ザ・ループ」にとどまらず、業務プロセスなどの設計を主導する存在を人間と位置づける考え方だ。「生成AIが登場する以前から、日本は『人間中心のAI』を社会の原則とする旨を明記し続けている。すべての責任を取るのは人間であり、AIに人格権や法人権を認めてしまう社会は耐えられない」(平井氏)と説明した。
また、津脇氏は「何のためにAIを活用するのか、という目的に立ち返ることが重要」としたうえで、「AIを使うことでパフォーマンスが下がるリスクがあるのならば、AIじゃないという選択肢も必要。選択肢を常に残し、ときには戻りつつ考えていくべき」と、ここでも人間の判断の必要性を強調した。
また、「ライブでのエンターテインメントなど、アナログ空間の価値が高まっている」(宮田氏)という共通見解が示され、改めて「AIが感じることができない、夕日の美しさといった五感での感受性、および問いを立てる力が人間の根本的価値」とまとめられた。
続いてのパネルディスカッションは、「AI時代の組織・人材育成」をテーマにMs. Engineer 代表取締役CEOのやまざき ひとみ氏、Generative AI Japan 発起人/理事でULSコンサルティング 取締役会長の漆原 茂氏、Generative AI Japan理事でアルサーガパートナーズ 代表取締役会長兼CTOの小俣泰明氏が登壇した。
議論したテーマは、(1)AI時代、人は何を学ぶべきか、(2)AI時代、人はどう育つのか、(3)誰が人を育てるのかーーの3点。
小俣氏は、「生成AIを有効に使うには、“専門性“がポイント」としたうえで、「例えばLINEで動くアプリを作りたいと生成AIに依頼すると、プログラムを書いてくれます。でも、ほとんど使い物にならない。専門知識のある人間が細かく指示することで品質が完成されていく。生成AIに勝つ/負けるではなく、生成AIを上手く使うという意味では専門性を学ぶことが重要」と指摘した。
やまざき氏は、手掛けている地方女性のリスキリング事例を通じて、「生活経験値が高くて生活者視点が強い方がAIのスキルを身に着けることで、可能性が広がっていく」と“経験”の重要性を強調。
漆原氏は、「簡単に結果を求めるうようなAIの使用は思考力の低下につながるため、失敗を経験しながら学ぶ環境が重要」と指摘したうえで、「人を育てるのはやはり人。AIは聞き手を忖度しがちな性質を持っている」と指摘した。
また、3名の共通見解として「1社単独でAI人材育成は困難。業界横断的なコミュニティでの共同学習が有効」という意見もあがった。
AIがもたらす企業や経済、あるいは生活への影響はすでに大きい。日本の戦略は、すでに「実装」にシフトしており、フィジカルAIやバーティカルAIでの優位性確保、人間にしかできないことの価値再発見、そして組織・人材育成における産官学の連携が、今後の日本の成長の鍵となることが明確に示されたイベントだったといえる。