コラム
第39回
このコラムを読まれている多くの皆さまが、各企業のSVやリーダーとして新入社員や部下の方々に接客や電話対応を指導なさっていることと思います。今回は、そうした現場で特に重要となる「褒める風土の醸成」についてご紹介したいと思います。
たとえば、部下の佐藤さんの電話応対について、お客様からお褒めの手紙やメールが届いたとします。その際、ミーティングの場で「どこが、どのように良かったのか」を具体的にみんなに紹介するようにします。新人やまだ経験の浅い社員にとって、実際の事例ほど学びになるものはありません。「その一言が喜ばれたのか」「こういう姿勢が評価されたのか」といった具体的なポイントを知ることが大きな学びになり、成功のイメージを明確に描くことができます。
また、褒める場面は1対1だけにとどめる必要はありません。もちろん個別に伝えることも大切ですが、同じ内容でも皆の前で共有することで、その効果は大きく広がります。たとえば、会議の場で、「今回の成功は、伊藤さんがお客様のニーズを丁寧に拾い上げてくれたことによるものです」と具体的に名前を挙げて伝えます。あるいはお客様に対して「私の右腕としてがんばってくれている田中です」「彼の誠実で丁寧な仕事ぶりで、私はいつも助けられているんですよ」と紹介する。そうした言葉は、本人にとって大きな自信となり、仕事への意欲を高める原動力になります。
リーダーに求められる重要な役割の一つは、メンバーのモチベーションを引き出すことです。そのためには、日頃から部下の行動や努力に目を向け、きちんと認める姿勢が欠かせません。自分の業務に集中することはもちろん重要ですが、周囲を観察し、一人ひとりの強みや成長の兆しを見逃さないことこそがリーダーの価値を高める行動と言えるでしょう。
そういった褒める風土づくりは、特別な取り組みではなく、日々の小さな積み重ねから生まれます。たとえば作成を依頼した資料を持ってきた部下に対して「伊藤さん、ありがとう。とても見やすい資料になっているね」と相手の目を見て伝える。ただそれだけでも、相手の受け取り方は大きく変わります。アイコンタクトを伴ったひと言の称賛には、想像以上の力があります。
褒める風土づくりのポイントは、その人の強みをみんなの前で「具体的に」「名前を添えて」伝えることです。そうすることで評価はよりリアルに伝わり、周囲のメンバーにも良い影響が広がります。褒められた本人はさらに主体的に取り組み、その姿勢がまた周囲に伝搬していくでしょう。
優秀な人材は自然に育つものではありません。日々の関わり方、そして言葉のかけ方によって育まれるものです。褒める風土を根付かせることは、上司である皆さまのマネジメント次第で実現できる、最も効果的で持続的な人材育成の一歩なのです。
