バンダイ

今月のPOINTS!
■システム概要
顧客の声を商品・サービス改善につなげるVOC活動の一環として、プラスアルファ・コンサルティングの「見える化エンジン」を導入。社内ポータル「お客様の声ポータル」に組み込み、さまざまな角度から問い合わせや苦情の傾向を社内で把握できる仕組みを構築。
■選び方のポイント
過去10年分のVOCを蓄積し、深く分析できる専門家向けツールは用意していたものの、商品の“現在”を知るには1件1件読み込んで事象を把握する必要があり、商品改善を事業部門に伝えるには負荷が大きかった。直感的に傾向を把握でき、企画部門など幅広い社員が使いやすい点を評価して採用。
■使い方のポイント
「見える化エンジン」には、週次ランキング、申し出内容、注目TOPICS、ご意見・ご要望の4つのメニューを設定。ライフサイクルが短い商品特性に合わせ、1週間ごとに情報確認できるようにした。相談センターでは毎週確認し、苦情や問い合わせが多い商品に対してFAQ作成などの対応に活用している。
玩具・ホビー製品などを取り扱うバンダイの商品特性は、多品種かつ短いライフサイクルにある。プロダクトマネジメント部 相談センターチーム シニアアドバイザーの岩村 剛氏は、「年間取扱点数は約1万9900点、新商品が1万1900点(2026年3月時点)」と説明する。新商品の販売期間は数カ月から1年程度だ。
品質管理を行う同チームでは、商品不具合や商品危害、商品の使い方・売場など、お客様相談センターに寄せられた年間約20万件のVOC(顧客の声)を管理している。
チームが掲げる方針は、顧客体験(CX)の向上。顧客対応とVOC活動を通じてCX向上を図る。そのための基盤が、全社員に公開する「お客様の声ポータル」だ(画面)。

「Good Data」は、約10年分のVOCを蓄積したデータベースだ。Excelにダウンロードして詳細分析でき、主に仕入、品質管理、設計、企画開発担当が利用している。
一方、商品点数が多く、ライフサイクルも短い同社にとって、詳細分析だけでは追いつかない場面もある。同部 相談センターチーム マネージャーの中田京子氏は、「商品改善を事業部門に伝える際にテキストデータを読み込む必要があります。その負担を減らすため、『見える化エンジン』を導入しました」と説明する。VOCを1件ずつ読み込むのではなく、まず傾向をつかむ。“鳥の目”(マクロ視点)でVOCを俯瞰する仕組みだ。
「見える化エンジン」は、プラスアルファ・コンサルティングが開発するSaaS型テキストマイニングツール。VOCを共起関係のマッピングやワードクラウドで可視化できる。岩村氏は、事象が把握しやすく、商品不具合などの課題にいち早く気づける点を評価する。
同社では、週次ランキング、申し出内容、注目TOPICS、ご意見・ご要望の4メニューを設定する。なかでも週次ランキングは、商品の短いライフサイクルに合わせ、1週間ごとに問い合わせ数が多かった商品を表示する。週次で確認することで、相談センターチームは苦情や問い合わせが多いものに対して迅速にFAQを作成するなど、スピード感を持って対応している。
元データは、オペレータが商品改善のフィードバックのために記録した文章で、専任担当者が辞書登録で不要情報を除去したうえでテキストマイニングにかけている。
Good Dataと見える化エンジンは、用途で使い分けている。Good Dataは詳細に読み込み、数字を根拠に対策を講じるための分析基盤。一方、見える化エンジンは、企画部門の一人ひとりにも見てもらうための、感覚的に使えるVOC把握ツールだ。中田氏は、「商品のアイテム数の多さと回転率の速さに合っている」と強調する。
現在、見える化エンジンは月間約300アクセスで、2023年の導入時と比較して約2倍と社内活用が進んでいる。経営層はトレンド把握のためにも活用しているという。

もっとも、ツールは導入すれば使われるわけではない。導入から1年近く経った2024年11月に実施した社内認知度調査では、43%と、過半数の社員が知らない状況だった。さらに、使ったことがある人は3割程度にとどまっていた。
そこで岩村氏らは、社員向けセミナーの開催、毎月のVOCフィードバック会議での説明コーナー新設、年1回の社内展示会での見える化エンジン体験ブース設置と3つの社内プロモーションを実施した。
KPI目標は月間280アクセスに設定。2025年上期時点では月間209アクセスで達成率76.4%だったが、各施策の効果により、年度末には月平均313アクセス、計画比112%を達成。ツールの価値を伝え、実際に触れる機会を作ることで、VOC活用の裾野を広げた。
効果は、相談センターチーム内の業務にも表れている。導入前は、VOCを1件1件読み込んで事象を把握する必要があり、統括メンバーの読み解き作業が大きな負荷だったが、導入後は玩具の種類ごとに不具合を把握しやすくなり、社内でのデータ共有も進んでいる。
今後は、「お客様の声ポータル」の利便性をより高めていく意向だ。
商品数が多く、ライフサイクルが短いほど、VOCは“読む”だけでは追いつかない。全社が同じ“声の変化”を俯瞰し、気づきを得て商品・サービス改善につなげる。同社の取り組みは、VOC活用を専門部署の作業から、全社で共有し改善活動へ広げる実践例といえる。