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──HDI-Japan
HDI-Japanによる2025年の「公開格付け調査」は、12業界130社を対象に実施。3ツ星企業は、Webサポート80社、問い合わせ窓口66社という結果だった。現在、CS領域は慢性的な人手不足に悩まされ、呼量削減を目的としたセルフサービス化が進んでいる。しかし、顧客体験価値(CX)の追求なくしてはビジネスに失敗する可能性が高いという。AI・DX活用への姿勢が問われる。
現在、カスタマーサポート(CS)領域は大きな転換点を迎えている。コンタクトセンター、Webサポートともに、人手不足を背景としたセルフサービス化が隆盛。しかし、顧客視点なくしてのAI・DX活用は、ビジネスを失う可能性がある。
カスタマーサポート/ヘルプデスクの国際認定機関、米HDIの国内拠点であるHDI-Japanでは、Webサポートの有効性や企業の問い合わせ窓口のサポート内容について、HDIサポート国際基準に基づいた“顧客視点”で3ツ星〜星なしの4段階で格付けする「問い合わせ窓口格付け調査」を実施している。2025年は、ファッションレンタルから介護ホームまで、12業界130社を調査。その結果を図1にまとめる。

全体を見ると、Webサポートは3ツ星が80社、2ツ星が50社で、3ツ星企業は6割を超える。一方、問い合わせ窓口は、3ツ星が66社、2ツ星が61社、1ツ星が3社で、3ツ星企業は約5割となった。
「(問い合わせ窓口の)2006年の格付け開始当初は、3ツ星企業はわずか7%。それが20年間で50%まで広がりました。企業からすれば競争が激しくなり大変ですが、消費者にとっては非常に良い傾向です」と、山下辰巳CEOは話す。
格付け調査では、利用するチャネルを審査員が自由に選択する。2025年は、Webサポートが88.4%、電話が70.7%、チャットが38.3%、メールが21.4%(n=1146、複数回答あり)で、Webサポートを利用した審査員は約9割に達する。疑問を解消するための最初の手段としてWebサポートは確固たる地位を築いているといえる。一方、高齢者を中心に電話を好む人も少なくない。利用チャネルのトレンドは過去3年変化がなく、この傾向はまだしばらく続きそうだ。
2025年の格付け調査について、山下氏は「サポートを提供する側も受ける側も、やはりAIを意識し始めたと感じます。審査員からのコメントにも、AIが良い・悪いといった評価が多く出てくるようになりました。今後、AIは重要なキーワードです」と総括する。
また、コンタクトセンターのサポートの良し悪しだけでなく、Webも含め、顧客体験全体を評価する視点が強くなったと話す。「企業イメージにはじまり、Webサイトに対するイメージや操作性、問い合わせ窓口に対するイメージと実際の体験など、各々ピンポイントではなくサポート全体でその企業を見ています」と指摘。一貫したサポートの重要性を強調した。
格付け調査では、毎年、3ツ星サポートのポイントをまとめている(図2)。「各項目の表題は前年までとそれほど変わりませんが、詳細については変化があります。とくに、AI・KCS・顧客体験指標(XI)・XLA・ESM(エンタープライズサービスマネジメント)などを強調しています」(山下氏)。

例えば3番目の「呼量削減のためのDXはビジネスを失う」では、呼量・コスト削減を目的としたAI・DX活用に警鐘を鳴らす。「日本企業のAI活用はコスト削減に偏りがち。海外では、いかに顧客体験価値を高めるか、プロフィットを生み出すかに取り組んでいます。ここに大きな開きがある」と指摘する。呼量削減のために自動化を推進し、問い合わせ先を隠すような行為は顧客を失うことにつながる。
また、AI活用に際してはナレッジ整備が重要になる。この際、構造化されたナレッジの構築には、KCS(ナレッジセンターサービス)の方法論が有効と説明する。
5番目の「顧客体験の向上がビジネスを拡大する」も重要だ。製品・サービスの購入前・購入中・購入後のすべての顧客接点(カスタマージャーニー)で顧客体験を良くする。この際、顧客満足度調査が行われるが、山下氏はここでも警告する。「多くが企業視点の顧客満足度調査にとどまっています。しかし、真の顧客体験を把握するには顧客視点の満足度調査が必要。顧客体験指標を設定し、XLA(Experience Level Agreement)の達成に努めねばなりません」と山下氏は強調する。
7番目の「顧客一人一人に合わせたサービス提供」では、一貫性が高く個々の顧客に合わせた柔軟なワン・トゥ・ワン対応の必要性を説く。この際に重要なのが部門横断の取り組みだ。「サポートチャネルの多様化に伴い、部門間連携と組織横断的な対応が求められます。Web、マーケティング、営業、広報、CS部門などが連携した、全社一体のサポートマネジメント(ESM)が必須です」と唱える。
このことは、企業のサポートサービスは顧客体験全体で評価されるという指摘と合致している。
業界別に見ると金融業界が例年通り高評価だ。とくに生保・損保・証券の3業界は、Web・有人窓口ともに3ツ星企業が多数を占める。ただし、損保・証券については問い合わせ窓口の3ツ星企業が前年より減少している。業界で不祥事やトラブルが続き、呼量が増えたことが原因と考えられる。
一方、クレジットカード業界は前年と比べ3ツ星企業が増えた。「Webが相当高い評価になっています。ここ数年、各社とも電話が取り切れず、Web強化にシフトしています。問い合わせがデジタルに移行したことで、電話もつながりやすくなったと思われます」と、山下氏は分析する。銀行も非金融業と比べて高評価を維持している。
「金融業界は押しなべて高い。依頼格付けのNISA関連、確定拠出年金、ペイメントサービスなどの各窓口も高評価です」(山下氏)
金融業界と並んで高評価なのが化粧品メーカーだ。通販に強く、美容相談などにも応じることから、寄り添いや信頼関係構築が得意で、顧客満足度も高いと考えられる。
ホテル業界のWebサイトは、マーケティング寄りでサポート向きではなく低評価になりがち。問い合わせ窓口は、前回は3ツ星企業が10社だったが、今回は6社に減少。首都圏で外国人宿泊客が多い外資系ホテルを調査したが、日本人の期待に添えなかったようだ。
介護ホームは、ここ数年は低迷が続いたが、大手企業が参入したことで改善が見られる。ただし、施設の詳細になるとやはり現場に問い合わせるしかなく、センターは一時窓口的な役割が多いようだ。
今回、新しく調査したのは自動車とポータブル電源。自動車は、依頼格付けが増えたことから、公開格付けに昇格したという。
「メーカーによる温度差が大きいです。高級車よりも大衆車のほうがフレンドリーな対応が多い。また、自動車業界は業務委託が多いですが、メーカーとBPOの関係の深さも関係します。フォルクスワーゲンなどはオペレータに試乗してもらう機会を作っています。すると問い合わせに対しても自分の体験で案内できます。そうした気遣いができるメーカーが評価されます」と山下氏は説明する。
ポータブル電源は、キャンプブームや災害対策需要を踏まえて調査。競争が少ない業界のためか、格付け評価は低迷したようだ。
調査業界を俯瞰してみる。図3は、問い合わせ窓口のクオリティとパフォーマンスのスコアを業界平均別にプロットしたもの。生保・損保・証券・化粧品メーカーが、右上の3ツ星エリアに集中していることがわかる。また、図4は、Webサポートと問い合わせ窓口のスコアを業界平均別にプロットした。Webサポートで上位の業界ほど問い合わせ窓口の評価も高い。


2025年の調査でWebサポート/問い合わせ窓口ともに3ツ星企業を一覧でまとめた(図5)。損保業界が10社で最も多く、生保・証券が9社と続く。化粧品メーカー、介護ホームはともに5社だ。

HDI-Japanでは、毎年5月、前年に実施した「問い合わせ窓口格付け調査」のうち、公開格付け/依頼格付けで3ツ星、5ツ星、7ツ星を獲得した企業を表彰する「HDI AWARD」を開催している。今年も5月20日に東京・新宿の京王プラザホテルで開催。85社360名が参加し、盛大に行われた。
表彰では、2025年に3ツ星を獲得した企業57社が登壇。5ツ星は、3ツ星企業に対してHDI認定オーディタが内部監査を行い、一定水準以上の評価を得て認定され、今回は7社が表彰された。さらに、カスタマーサポートの最高峰に位置づけられる7ツ星は、HDIの「カスタマーサポート国際認定スタンダード」を高い水準でクリアすることで認定され、2025年はあいおいニッセイ同和損害保険、GMOペイメントゲートウェイの2社が認定。7ツ星は2年ごとの審査で、会場には2024年の認定企業である、SBI損害保険、富士フイルムサービスクリエイティブ、パーソルビジネスプロセスデザインの3社も参加。5社そろって登壇し、会場から多くの称賛を受けた。
格付け調査では、優秀なオペレータを認定する「3ツ星クオリティ格付け(個人評価)」も実施。2025年は160名が表彰された。さらに、個人表彰を受けたオペレータが8割以上在籍するチームを認定する「3ツ星クオリティ格付け(チーム評価)」では、プレステージ・コアソリューション、弁護士法人 東京新宿法律事務所の2社、4チームが表彰された。
「格付け調査は企業単位の参加でスタッフも頑張ろうとするのですが、個人賞ももらえるとなると相当モチベーションが上がるようです。定着率も高まるため、ぜひ参加してください」(山下氏)

