先週のCS関連ニュースのなかから、興味・関心を惹いたものを独自にピックアップする「CS News Watch」。今回は、「若手社員の電話離れ」について取り上げます。
「若年層の電話離れ」が議論されて久しい。企業規模を問わず、新卒の新入社員にとって「最初の壁」とまで言われ、コールセンターにおける採用難の原因のひとつとされている。
JCOM(東京都千代田区、岩木陽一代表取締役社長)はこのほど、「中小企業の電話応対業務に関する調査」を実施。これはカスタマーセンター(コールセンターなど)を持たない中小企業の経営者を対象としたもの。同社では「とくに専門のカスタマーセンターを持たない中小企業においては、電話応対が従業員の本来の業務を圧迫し、精神的な負担や離職の要因となっている可能性が懸念される」としたうえで、具体的な経営に対する影響を明らかにする目的で実施された。調査概要は次の通り。
調査期間:2026年2月9日~2月10日
調査方法:インターネット調査
調査対象:カスタマーセンターを持たない中小企業の経営者(20代~60代の男女)
調査人数:348名
モニター提供元:RCリサーチデータ
「電話応対業務は本来の業務遂行や従業員の精神面において負担になっていると感じるか」という設問に対しては、「非常に負担になっている」が5.5%、「やや負担になっている」が28.4%で、全体の約3分の1が負担になっていると回答。
「若手社員の電話応対への苦手意識や電話離れを感じることはあるか」に対しては、「非常に強く感じる」が8.9%、「やや感じる」が31.6%となったものの、「あまり感じない」が36.2%、「まったく感じない」が23.3%で、さして負担にも電話離れとも感じていない層の方が多い。
「現在、電話応対を適切に行える人材は充足しているか」についても67.2%が「充足している」、「電話応対の課題や負担軽減に向けて現在どのような対策を行っているか」という設問には74.4%が「とくに対策は行っていない」としており、さして緊急度の高い課題と認識していない様子がわかる。
しかし、当の若手社員たちは電話応対についてどう捉えているのか。約1年前に発表されたデータではあるが、IT業界の営業に特化したBPO事業者、BCC(大阪市中央区、伊藤一彦代表取締役社長)が実施した社会人3年目までの若手社員400人を対象とした調査では、「社会人になってすぐ苦手だと感じた仕事」という設問に対し、実に50.8%が「電話を受ける」と回答。2位も「電話をかける」の48.8%で、それ以外の業務を圧倒している。その苦手な業務を克服するため「会社や自身がどのようなことを行うべきか」についての回答で最も多かったのは「会社が研修制度を充実させる」で52%に達している。
この2つの調査からは、電話応対に関する経営者と若手社員の意識のあまりにも大きなギャップを垣間見ることができる。近年、会社の代表電話応対を受託するBPO、あるいはAIで一次対応するサービスも登場しているが、従業員視点から見ると待望のサービスといえそうだ。
今後、採用市場に登場する新卒の社員で「電話に慣れている」層が増えることはほとんど期待できない。電話応対がメインのコールセンターに喜んで従事する人員が増える可能性はほぼないと見てよさそうだ。結果的に、AIを活用した一次対応サービスは企業規模の大小を問わず受け入れられる余地は大きいと推察される。
一方、別の見方も可能だ。若手社員が電話応対を学ぶ機会を望んでいるとすれば、コールセンターなどのCS部門は、その教育機関を担うことができる。現場のマネジメントにとって、「お客様を(若手社員の)練習台にする」ことに対する抵抗はおそらく小さくはないと考えられるが、慣れていないスタッフほどマニュアルやスクリプト、FAQなどのナレッジを利用する。結果的にこれらのブラッシュアップの機会が増え、全体の品質/生産性向上に貢献できる可能性もある。もちろん、CSの現場における人手不足解消にもつながるうえに、「顧客のことを理解する」「商品やサービスの理解、それらが顧客の手元に届くデリバリープロセスの理解」という、若手社員の成長を促す絶好の機会ともなり得る。
コールセンターを新人や若手の人材育成機関に利用する――「電話離れ」の時代だからこそ、それを逆手に取る柔軟な発想と取り組みに期待したい。(矢島)